(論説)夏の終わりにJRAの「夏競馬」を考える(2008.9.7)

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「JRAサマーシリーズ」と銘打ち、
「サマー2000シリーズ」「サマースプリントシリーズ」
「サマージョッキーシリーズ」を開催する。
そして今年はこの時期から
3連単を全レース発売に切り替えた上に、
新馬戦に「メイクデビュー」という愛称まで付けた。
注目度、売上ともにどうしても落ちてしまう「夏競馬」。
JRAもその対策に必死な様子が感じられる。

今年の「夏競馬」がスタートした直後の6月30日(月)、
「週刊競馬ブック」の「一筆啓上」で、
日経・野元賢一記者が「夏季振興策を巡って」
というタイトルでこの「夏競馬」をテーマに論評していた。
この中で野元記者はJRAの「通年志向」を批判、
1年間の競馬にメリハリをつけることを主張。
そのコラムの中でこんな指摘をしている。

-こう考えると、夏競馬の振興といっても、
おのずと限界がある。
毎週の競馬を見ていれば、
番組の大半は編成終了が迫る3歳未勝利戦と、
最下級条件戦。
スターの大半は夏休みに入り、
材料といえば新馬戦程度。
当然、売上も少ないが、
人馬の移動経費の分、
4大競馬場よりも高コストだ-


野元記者はこの時期の「振興策」の限界を指摘している。
それでもコラムの最後に彼なりの「振興策」を
紹介していたのだが・・・。

この「週刊競馬ブック」発売後、
私は福島、函館、札幌、新潟という、
4つの「夏競馬」の舞台に足を運んでみた。
競馬場内は当然、地元の方が多い。
その「地元」と言っても
例えば福島なら、
隣県の宮城、山形はもちろん、
岩手や青森からも車を飛ばしてやってくる。
新潟も富山や石川、秋田などの県からの
来場者が少なくないことは
駐車場のナンバープレートを見るとすぐに分かる。
JRAは競馬場のある、なしに関わらず、
「全国」を対象に発売網を整備している。
地域によっては、
「夏競馬」は生で「競馬」を見る事ができる
数少ない機会であることを示しているのだろう。
恐らく夏の小倉競馬場には
同様に九州各県から人が集まっているに違いない。

一方もうひとつ、どの競馬場でも気が付くのは、
東京、中山で見かける人の姿が見られること。
福島、新潟の駐車場には
首都圏からの車も数多く見られた。
私自身も含めて、こうした競馬場に足を運ぶのは、
「旅行」のレベルと言える人が大半であるに違いない。
普段、4大競馬場(東京、中山、京都、阪神)の中には
「夏競馬はお休み」という人も少なくない。
そのような中、「夏競馬」の現場に
足を運んでくれるファンは、
「秋競馬」以降もコアな、ヘビーなファンであり続けて
くれる可能性は高い。

地元のファンに数少ない「競馬を見る機会」を提供する、
そして秋以降の優良なファンの獲得、形成という目的に、
「夏競馬」が機能していると見る事はできないものか?
そこには「売上」だけでは語ることのできない要素が
含まれているように思えるのだが。
同じ話を経営状態が厳しい地方競馬にするのは
「非常識だ」と言われかねないが、
JRAならまだまだ「売上」以外の効果を語ることは
無意味ではないだろう。
その前提で物事を考えることはできないものだろうか?

各地の競馬場を見る限り、
独自にその試みが行われていることが
感じられる。

福島での騎手交流イベント


函館での騎手交流イベント

新潟での騎手交流イベント

それぞれの競馬場でチャリティーゼッケン販売などの形で
騎手交流イベントが行われた。
そのレベルは4大競馬場でも見られないほど、
距離感の近いイベントだったように思われた。

福島での馬場開放イベント

 
函館での馬場開放イベント

馬場開放イベントも4大競馬場にはない
競馬との「距離感」を縮める役割を果たしているように
私には思えた。
普段は4大競馬場を中心に足を運ぶ人でも
ここでは少し違う体験が出来る。
これは秋に向けてのヘビーファン形成、
場合によってはつなぎ留めに大きな役割を果たすに違いない。

2010年にリニューアルオープンする函館競馬場は
「リゾート地の開放感あふれる競馬場」を
そのコンセプトの一つとしているという。
「リゾート」という発想そのものが
これまでの競馬場にはなかったもので
どのようなファンを
函館競馬場に集めたいと考えているのかを
想像すると、
「サマー〇〇シリーズ」や「メイクデビュー」などと
いうものが必要か、否か見えてくるような
気がするのだがいかがだろうか?

今日、7日(日)の新潟・小倉両2歳Sで
競馬の暦の上では「夏」が終わる。
JRAにはこの「夏」を「売上」だけではなく、
もっと広い視点で総括して頂きたい。
「夏」の持つ意味は
4大競馬場の芝コース保護だけでも
「暑さ対策」だけでもない、と私自身は考える。

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(かんのいちろう・本名同じ)
「もっと競馬をやりたいな」で、
「第1回Gallopエッセー大賞(2005年)」において、
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現在、競馬読み物Webサイト
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