(論説)「荒尾競馬廃止」に思うこと(2011.9.8)

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荒尾競馬を主催する荒尾競馬組合は7日(水)、
公式サイトトップページに
「荒尾競馬組合における競馬事業廃止について」と題した
挨拶文を掲載、
荒尾競馬の廃止を公式に発表した。
廃止時期は本場での開催については
「事情が許す限り」今年の12月23日(金)とし、
他地区の場外発売については来年3月末まで実施する予定。
2012年度以降の他地区場外発売については
関係機関との協議の上、
決定する意向とのこと。

荒尾競馬については
荒尾市の前畑淳治市長が5日(月)の市議会で
「廃止」を表明していたが、
荒尾競馬組合から「廃止」の公式表明があったのは
これが初めてとなる。

荒尾競馬公式サイト

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昨年、福山競馬の存廃問題が、
地元紙などで大きく取り上げられたことがあった。
当時、私はTwitter上で楽天競馬にこんな質問をしたことがあった。

「福山競馬の馬券販売に関わる立場として、
今回の事態についての見解をお聞かせください。
また何らかの行動を起こす予定はありますでしょうか?」
 
彼らは私の質問には答えなかった。
代わりに彼らはこんな内容のツイートを残した。

「福山競馬のレースや場内グルメ、
周辺の観光スポットの紹介などを通して、
福山競馬の魅力を伝えていきたいと思います」 

このツイートが「日替わりライターブログ」
を書かれている方々によるものであるとしたら問題はない。
素晴らしい意見ではないかと思う。
楽天競馬も「地方競馬関連の情報発信」という役割を担っている。
その立場から考えれば、
こうしたツイートを残すことは間違いではない。
だが彼らには、もう一つ別の立場がある。
それは「福山競馬の馬券を売る」立場である。
その観点から見れば、
「競馬の魅力を伝える」だけではない、
ある一定の責任が彼らにはあるのではないか。
その責任についてどう考えているのか?
当時は全く見えてこなかった。
この点は今回の荒尾に関しても変わらない。

オッズパークブログで元高崎競馬所属騎手の赤見千尋さんが
自らの経験を基に、
荒尾競馬の厩舎関係者の方々が置かれている状況を
的確に指摘されている。


荒尾競馬廃止。(赤見千尋のRed View-オッズパーク)


赤見さんが騎手引退を余儀なくされた高崎競馬、
そして宇都宮競馬の廃止以降、
地方競馬を取り巻く環境について、
大きく変化したポイントが一つある。
当時も「D-net」という、
インターネットによる在宅投票システムは実在した。
その「D-net」を民間参入の形でオッズパークが引き継ぎ、
コンテンツの充実を図っていった。
更にオッズパークに楽天競馬という、
競合する民間参入のサービスもスタートした。
荒尾を含む各地の地方競馬において
「インターネットによる馬券発売」は、
厳しい経営環境の中でも「プラス材料」の要素であった筈。
この点について、

「北関東廃止とは違い、
今はインターネットによる馬券発売システムが整備され、
ネットによる発売は伸びているのに・・・」

という話が今回の「荒尾廃止」に関連して
競馬メディア関係者から出ないのは何故だろうか。
一部で指摘される販売手数料の問題が関係しているからだろうか?
この件について、
かん口令が存在するかのように
誰もが口を閉ざしている点が気になっている。
競馬メディア関係者の中で
地方競馬の情報発信に関係する仕事をしている人の多くが、
何らかの形でオッズパークや楽天競馬と関係しているからなのだろうか?
民間企業である以上、
「手数料」の存在は当然のことであるが、
その「手数料」の割合や、
「手数料」を利用した広報活動のあり方については
議論があっていい筈ではないだろうか?
前述の楽天競馬のTwitterを見ているといつも感じることがある。
情報発信や販促企画を行う地域に偏りがあるのではないだろうか?
手数料収入の差や主催者の考え方の違いが
偏りを生じさせる原因となっているのかもしれないが、
こうした点も本来なら議論になっていい筈だ。

もし本当に「かん口令」が存在するとして、
その理由がばんえい競馬のように
「楽天が経営参画する形で荒尾競馬は存続」といった
「ウルトラC」級の話なら歓迎したい。
だが赤見さんの指摘から判断して、
その可能性は極めて低いと言わざるを得ない。
厩舎関係者の方々にそこまでのモチベーションが残っているとは考えにくいし、
外部の者がそれを強いるのも申し訳ない状況なのだろう。
ならば今回の「荒尾廃止」を機に、
「インターネット販売」のあり方を議論する必要があるように思える。
「地方競馬の救世主」的な存在だった
オッズパークや楽天競馬が、
荒尾競馬を救うことが出来なかったのだから。
そしてこのままでは
更に廃止に追い込まれる地方競馬が存在する可能性もあるのだから。


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(かんのいちろう・本名同じ)
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