(レポート)アパパネがヴィクトリアマイルを制す 現地レポート(2011.5.16)

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2011年5月15日(日) 東京競馬場

前週のNHKマイルカップ同様、
この日の東京競馬場上空も青空が広がっていました。
但し少々風が強く、
新聞やマークカード、ビニール袋などが
舞い上がる1日でした。

前日の14日(土)より、
盛岡競馬場で岩手競馬の2011年度シーズンが開幕。
約1ヶ月半遅れのスタートとなった岩手競馬の馬券は、
岩手競馬の場外発売所となっている
東京競馬場の101投票所でも発売されました。
この15日(日)は私も何度か足を運び、
馬券を購入しました。
開門直後に岩手競馬の専門紙を買いに行った時に、
中にいた初老の警備員さんがお客さんと
こんな会話をしていました。

「何とか開幕して、
ここ(岩手競馬場外発売所)にも
人が来るようになったけど、
いつも来てくれる人の姿がないと安心出来ないね」

震災直後はJRAや他地区地方競馬の一部も
一時は開催中止が相次ぎました。
しかし徐々に再開して「日常」を取り戻す中で、
岩手競馬は「被災地」でもある為に
再開までに2ヶ月以上を要することになりました。
関係する人たちが「忘れられているのではないか?」と
不安を感じるのは当然の事でしょう。
この101投票所には確かに「常連」と言えるほど足を運んで、
岩手競馬の馬券を買っている人たちがいます。
競馬組合の職員や警備員といった人たちが
こうした「常連」さんの姿を見ないと安心出来ない、
という気持ちは理解できます。
地元の競馬ではないのですし。

この日の101投票所は昨年まで目にしていた、
いつもの「岩手競馬場外発売所」の状況に
戻っていたように思えました。
前半や中盤のレースでは閑散とした静かな場所で、
黙々と馬券を買っている「常連」さんの姿が目立ち、
JRAの最終レースが終わった後になると
「第13R」での逆転を狙おうと集まり、
岩手競馬の最終レースの馬券を買う為に
自動発券機に列を作るのも、
昨年までと一緒でした。
この場所にも「日常」が戻ってきたと言えるかもしれません。

でもそんな「日常」のままでいいのでしょうか?
元々あった経営面での課題に、
震災による被害からの復旧という新たな課題が
積み上げられた形となったのが今年の岩手競馬です。
先週のNHKマイルカップの現地レポートの際に、
私はこんな事を書きました。

本来ならば、
この日にこうしたPRがもっと行われるべきではないでしょうか?
もちろん、岩手県競馬組合の職員などが、
東京に出張してビラ配りなどというのは難しいことなのかもしれません。
だからこそ、手を差しのべるべき立場にいるのはJRAだと思います。


初日となった前日14日(土)については分かりませんが、
この15日(日)については何もありませんでした。
先週も書きましたが、
JRAはこの101投票所について
PR等を手伝わなければならない義務はありません。
それでも東日本大震災の被災地での競馬再開に何もしないというのは、
寂しい事のように思えます。

まだ投票所が閑散としていた時間帯に
50代の男性二人組が
発券機にJRAのマークカードを入れようとして、
職員に「ここは岩手競馬の発売所で、JRAは発売していないのです」と
言われている光景を見ました。
恐らくベテランの競馬ファンで、
東京競馬場にも何度も足を運んでいる人だと思います。
そんな人でも
この場所が岩手の馬券を売っている場所であることを知りません。
こうした様子を昨年も何度か目にしました。
設置されてからそれなりの年月を経た場所の筈なのですが・・・。
それがこの場所の現状です。
岩手競馬の馬券を買うことが被災地支援につながる今こそ、
こうした状況が改善されるきっかけとすべきなのですが、
そんな兆しは全く感じられません。
震災以降、
首都圏では岩手県をはじめとする東北地方各県のアンテナショップには、
東北地方で生産された食料品を買って
被災地を応援しようとする人たちが訪れて賑わっていると聞きます。
この東京競馬場101投票所は
「岩手競馬のアンテナショップ」のようなところだと思います。
ならば昨年以上に盛り上がる場所でなければならないのではないでしょうか。
盛岡の最終レースの頃、
101投票所には古谷剛彦さんや土屋真光さんといった
競馬メディアで活躍されている方々の姿も見られました。
こうした方々はこの状況をどうお考えなのでしょうか。
古谷さんはTwitterで盛岡の最終レースに多くの人が集まっていることを
ツイートされていましたが、
これは「いつもの事」でしかありません。
今、岩手競馬に必要とされているのは「いつもの事」以上の何かでは
ないのでしょうか。

101投票所に「日常」が戻ってきたことを喜ぶ声もありますが、
私は反対にこの場所の「限界」を感じました。
ご存じの方も多いと思いますが、
東日本大震災とは無関係に、
福島競馬場では岩手競馬場外発売所が閉鎖されました。
仮に震災がなく、
いつものように福島競馬場で競馬開催が行われていたとしても
今年度から福島では岩手競馬の馬券を買うことは出来ません。
この東京競馬場の101投票所も場合によっては同様の決断をして、
その経費を被災施設の復旧に回した方が
賢明であるように思えます。
この場所の「常連」さんには申し訳ないですし、
私自身も「岩手競馬」について勉強した場所なのですが、
それが「岩手競馬」の為になるのならば、
その決断を受け入れたいと思います。

岩手競馬の話が長くなってしまいました。
この日のメインレース、
ヴィクトリアマイルに話を移そうと思います。
昨年の年度代表馬でドバイ帰りのブエナビスタが
単勝オッズ1.5倍と断然の支持を集めて1番人気。
昨年の牝馬3冠馬アパパネが4.1倍で2番人気。
戦前からこの2頭の「直接対決」が話題となっていました。
実績面からもこの2頭が抜けていたということで、
3番人気のレディアルバローザは11.7倍。
ブエナビスタとアパパネ。
レースもこの2頭の位置取りに中心が集まりました。

この2頭のうち、
前にいたのは常にアパパネでした。
直線でも先に追い込んで先頭に躍り出たのはアパパネの方。
ブエナビスタはアパパネの直後でマークするような形で追走しましたが、
ゴール板前でもアパパネを交わすことは出来ませんでした。
アパパネがクビ差先着する形で優勝となりました。
勝ちタイムは芝1600メートル1分31秒9。
このレースで逃げたオウケンサクラが前半3ハロン33秒5、
1000メートル通過55秒9というハイペースで飛ばしたせいか、
1分32秒を切る決着となりました。
3着はレディアルバローザ。
2着のブエナビスタとのクビ差は大健闘と言うべきでしょうか。
それともブエナビスタがマイル戦では距離不足になっていると
考えるべきなのでしょうか。

ゴール板通過後の蛯名正義はガッツポーズ。
震災後、再開された関東地区の中央競馬では、
皐月賞でも、NHKマイルカップでも、
優勝馬のウイニングランは行われていませんでしたが、
この日のアパパネと蛯名正義は
満員のファンの前でウイニングランを披露。
あのブエナビスタを破った事を
陣営が喜んでいる様子が感じられました。
アパパネはキングカメハメハ産駒の4歳牝馬。
昨年の牝馬3冠(桜花賞、オークス、秋華賞)の他、
2009年には阪神ジュベナイルフィリーズを制しており、
G1タイトルは5つ目となります。

この日の東京競馬場のレース結果には
ある一つの特徴があります。
このヴィクトリアマイルを制したアパパネを含む
1Rから最終12Rまで全てのレースにおける勝ち馬が関東馬でした。
京都や阪神などの競馬場で関西馬が全レースを勝ち上がることは
決して珍しくありませんが、
長く「西高東低」の状況が続き、
更にG1デーで関西馬が多数参戦している中でのこの結果は、
注目すべきかもしれません。
東日本大震災直後、関東地区の競馬開催が中止となり、
阪神競馬場、小倉競馬場のみで中央競馬が行われていた時、
美浦から遠征した関東馬が馬券圏内を賑わせて
関西のファンを驚かせたことがありました。
茨城県にある美浦トレーニングセンターも、
一部の施設が被害を受け、
一時は断水になったという「被災地」です。
美浦の人馬達も困難を乗り越えて
「結果」を残そうと懸命な取り組みが続けられています。

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プロフィール

菅野一郎
(かんのいちろう・本名同じ)
「もっと競馬をやりたいな」で、
「第1回Gallopエッセー大賞(2005年)」において、
佳作を受賞。
現在、競馬読み物Webサイト
「WEEKEND DREAM」管理人を務める。
時には厳しく、時には温かく愛情を込めて、「競馬の未来」を語ります。

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私・菅野へのご連絡は以下のメールアドレスまでお願いします。
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