「競馬」を教えてくれた馬


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「この馬、左回りしか走らねえんだよ。
だから右回りの京都ではダメ。」

1991年のマイルチャンピオンシップを
予想していた時のことです。
当時、まだ横浜で大学生をしていました。
今と違って、
競馬法で馬券を買うことが許されていない身分でしたが、
学生だとは思われないような服を着て、
私服警官らしき人の姿がないか注意しつつ、
ウインズ横浜に出入りしていました。

冒頭の言葉は、
当時バイトしていたコンビニに
よく来るお客さんから教えられたもの。
このお客さんにウインズ横浜で
ばったり会ってしまって以来、
競馬における「師匠」のような存在だった人でした。
夜中で客が少ない時間帯のコンビニですから、
競馬の話をしても誰にも怒られることはありません。
週末の夜はいつもバイトをしながら、
この「師匠」と馬券検討をしていました。

このマイルチャンピオンシップ以前に
ダイタクヘリオスが右回りのコースで勝ったのは
前年の3歳馬限定戦(当時の年齢表記では4歳)葵S。
この葵Sは2位入線ながら、
1位アンビシャスホープの失格により、
繰り上がりで勝利したレースでした。
ダイタクヘリオスはこのレース以降、
古馬になってから右回りでは勝つどころか、
連対さえありませんでした。

「ダイタクヘリオスは左回りでしか狙えない」

当時はまだまだ競馬初心者。
「右回り」「左回り」の意味をようやく覚えた頃でした。
競馬には「回り」による有利、不利があることを
知ったのもこの頃のこと。
だからこの年の安田記念で2着に入っていても、
高松宮杯で勝っていても、
前走の毎日王冠2着でも、
この馬はノーマークと決めていました。
しかし結果は好スタートからの逃げきり勝ち。
1番人気のダイイチルビーの追い込みも
この馬を捕まえるまでには至りませんでした。
「ダイタクヘリオスは右回りでは消し」
こんな単純な予想では馬券は当たらないのか・・・。
競馬の難しさを一つ学んだレースでした。


翌年の毎日王冠で
ダイタクヘリオスは別定59キロを背負いながら
後続を完封して勝利、
という派手な勝ちっぷりを見せます。
次走の天皇賞・秋は1キロ軽い58キロ。
これだけ強い競馬をした馬が
斤量にも恵まれて挑んだこのレース、
「負ける訳がないじゃん」と思い、
いつものBOX馬券
(当時はまだなかったかな?
「囲み」なんていう言い方をしていたような・・・)
の他にダイタクヘリオスの単勝を厚めに購入。
スポーツ紙等で語られる
1番人気トウカイテイオーの不調説にニンマリしながら、
G1のファンファーレを待ったのを覚えています。

しかし、ダイタクヘリオスは
そのトウカイテイオーにも先着を許し、7着・・・。
この年、逃げ切りで宝塚記念を制した
メジロパーマーに絡まれて
1000メートル通過57秒5のハイペースに
飲み込まれての敗戦でした。
どんなにスピードがあっても、
展開に恵まれないと競馬は勝てない。
これもダイタクヘリオスに教えられたことかもしれませんね。


しかし、その天皇賞・秋の疲れもなく、
ダイタクヘリオスはマイルチャンピオンシップを連覇します。
その次走、陣営が選んだレースはスプリンターズSでした。
3歳時にクリスタルカップを勝っているとはいえ、
その後の「電撃の6ハロン戦」で結果が出ていなかった
ダイタクヘリオス。
前年のCBC賞以来の1200メートル戦にも関わらず、
「マイルや1800メートル戦であれだけのスピードを
持つ馬なのだから、
その途中の距離、
1200メートルぐらい押し切っちゃうに決まってるだろ。」
と、この馬絡みの馬券で果敢に勝負!!
当時は「距離不足」ということを知らなかったオイラ・・・。
4着という結果に、
1200メートルと1600メートルでは
勝つ馬に求められる適性が違うことを学びました。


ダイタクヘリオスという馬に、
馬券でいい想いをした記憶はありません。
いつも損ばかりさせられていたような・・・。
でも、競馬初心者だった私に、
「競馬」の面白さ、奥深さ、難しさを
教えてくれた馬だったような気がして、
とても印象に残っています。

今朝の「新競馬ニュース」でも書きましたが、
そのダイタクヘリオスが12日(金)、死亡しました。

ダイタクヘリオス死亡(新KANKANの競馬ニュース)

「初心者時代」の自分には
忘れることができない1頭です。
その時代から、
「馬券が当たらない」ことに関しては
今も変わらないのだけど(苦笑)。
それでも未だに競馬を続けている
原因の何割かは、
この馬にあると思っています。

ダイタクヘリオスよ、ありがとう。
天国の競馬場でもあのスピードで
駆け続けてくれると信じています。

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プロフィール

菅野一郎
(かんのいちろう・本名同じ)
「もっと競馬をやりたいな」で、
「第1回Gallopエッセー大賞(2005年)」において、
佳作を受賞。
現在、競馬読み物Webサイト
「WEEKEND DREAM」管理人を務める。
時には厳しく、時には温かく愛情を込めて、「競馬の未来」を語ります。

※「プロフィール詳細・経歴」もご覧ください

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