あの騎手の思い出

さて、前日付の日記で書くつもりだった話題でも。
１６日（木）にＪＲＡの調教師、騎手免許試験の
合格者が発表になったのですが、
今月末で騎手生活に別れを告げることになった騎手が３人。
この３人の思い出話でも・・・。

１．常石勝義
残念ながら復帰の希望は叶いませんでした。
２００３年にビッグテーストで制した中山グランドジャンプ、
同年にオースミコスモで制した関屋記念。
その両方のレースを生で見る事が出来ました。
中山グランドジャンプを勝って、Ｇ１ジョッキーとなった時、
「平地でもＧ１を勝ちたい」とコメントしていたのを覚えています。
その夏に関屋記念を勝った時、
その勝ちっぷりから、
「本当にＧ１を勝ってしまうのでは？」
と密かに期待したのですが・・・。
あの日の新潟競馬場、
最終レースの回顧イベントでのイベントには
井崎脩五郎さん、吉田均さんの「スーパー競馬」解説者コンビが登場。
２人ともオースミコスモへの印が軽かった事に
「反省しています」と常石に頭を下げていたのですが、
その時、２人に「反省してください」と語りながら見せた
彼の笑顔をとてもよく覚えています。
関西のジョッキーなので、生で見る機会は少ないのですが、
あの時、きっと好青年なのだろうな、と直感した事を覚えています。
デビュー１年目に遭遇した大きな落馬事故の後、
後遺症を抱えながらの騎手生活だったと聞いています。
あの笑顔の裏側はきっと苦悩の日々だったに違いありません。
お疲れ様でした。

２．本田優
「ＷＥＥＫＥＮＤ　ＤＲＥＡＭ」で「勝手にＭＶＰ！」という
コンテンツをやっていた頃、
彼を「空気の読めない」騎手として紹介した事があります。
「空気が読めない」一般にはあまりいい意味で使われないこの表現、
でもネット上でこの人を評して使う時は、
間違いなく褒め言葉でした。
人気馬が勝ちそうな雰囲気のゴール前で、
人気薄の馬で追い込んで勝利を奪ったり、
反対に人気薄の馬が追い込むのを
前で粘り込んで先着を許さなかったり・・・。

この人のファンの方なら思い出のレースは
テイエムオーシャンやカワカミプリンセスで勝ったもの、
という事になるのかもしれません。
オールドファンの方ならゴールドシチーかもしれませんが・・・。
でも私自身は２００３年にチアズブライトリーで制した京阪杯ですね。
あのレースは「これぞ本田優！！」という競馬だったように思えます。
緩い流れの中、
どの騎手も直線での決め手勝負を頭に思い描いている状況下で、
４コーナーの手前から馬群の外を一気にマクって直線の入口で先頭へ。
そしてそのままゴールまで粘り込むという内容の競馬。
当時、チアズブライトリーは１７頭立ての１４番人気、
そんな低評価の馬がレースの流れをブチ壊しての勝利。
馬券を買って見ていた人も、恐らく乗っていた他の騎手たちも、
「そんな馬がそんな所で動くなよ」と言いたかっただろうなあ・・・。
でもそれが本田優なのです。
それが彼の魅力でした。
調教師としての彼にはいい馬も育てて欲しいですが、
いい騎手も育てて欲しいなあ・・・。
出来れば彼同様、「空気の読めない騎手」を是非・・・（笑）。
そう言えば、ヴィクトリアマイルで復帰だと言われている
カワカミプリンセスには誰が乗るのだろう？

３．鹿戸雄一
今、ＪＲＡの競馬場でジョッキーが登場するイベントで、
パフォーマンスで集まったファンを楽しませる騎手の代表格というと
東は後藤浩輝、西は和田竜二ですが（笑）、
以前はこの人の存在が目立っていたように記憶しています。
というのもこの人は、
一時期日本テレビのとんねるずの番組に出演していた事があり、
その頃から（その以前からなのかもしれませんが）
とんねるずの２人と親交があった模様。
どうも２人を通して話術を身に付けてしまったようで、
関東地区で騎手クラブ主催のチャリティーオークションになると、
なんと「司会者」として登場していました。
ステージでジョッキー仲間に鋭いツッコミを入れてみたり、
ボケをかましてみたり、
としっかりと「司会」をこなすこの人にはいつも軽い驚きを感じていました。

中でも印象深かったのは１９９８年の天皇賞・秋当日のイベントでの事。
この日、鹿戸は府中ではなく、同時開催の福島で騎乗。
にも関わらず、府中のイベントには例によって司会者として名前がある。
どうやって福島で乗っている人が・・・、と思ったところ、
物凄い事実が判明。
この日、彼は福島で９Ｒまで騎乗がありました。
その９Ｒ雲雀ヶ原特別でビックリメールに騎乗した後、
すぐに荷物をまとめて、東京に戻る東北新幹線に飛び乗ったのです。
そして大急ぎで府中へ。
その府中でのイベント開始時、
彼とともに司会を務めたフジテレビの福原直英アナが
「鹿戸騎手から先ほど、東府中駅に着いた、との連絡がありました。
もう少しお待ちください。」
というアナウンスが入った時は思わず場内から笑いが・・・。
そしてステージに登場した「司会者・鹿戸雄一」が
こんな強烈なジョークを・・・。

「福島９Ｒですけど、８着までに入ると
後検量を受けないといけないんですよね。
後検量を受けてると新幹線の時間に間に合わないので
１０着にしてきちゃいました。」

あの～、鹿戸さん、アナタの馬の馬券を買ってるファンは怒るゾ～・・・、
と思ったのですが、
当時はまだ今のように３６レース発売などというものが
行なわれていなかった時代、
他場はメインレースしか売っていませんでしたから、
福島９Ｒは府中では発売がなかったレース。
まあ、どんな乗り方をしても怒る人はいなかったという事で。
でもここまでして、
ジョッキーが府中のイベントの「司会」を務めるかね（笑）。
その一方で、ビーマイナカヤマで重賞を勝ったり、
ちゃんとジョッキーとしての仕事もしていた訳ですけどね。

最近はゼンノロブロイの海外遠征に
調教騎乗の為に帯同したりしていましたが、
今思えば、調教師になる為の準備でもあったのかもしれませんね。
そう言えば「司会」を務めたイベントで、
同期の田面木博公が「ベテラン」と呼ばれているのを見て、
「田面木君は同期なんだから、年寄り扱いしないでよ」
と訴えていた事があったのですが、
田面木はまだ現役ですよね。
頑張って欲しいなあ・・・。
もちろん、鹿戸サンも調教師としての活躍を期待します。