ダート競馬の祭典・JBC物語リレーコラム「川崎JBC 忘れられない二人の騎手」


JBCのリレーコラムに
私が書いたものがアップされました。
先週、新幹線の中で書いていた奴です(笑)。
こちらの日記でもご紹介します。

「ダート競馬の祭典・JBC物語」はこちら

私の記事はこちら


タイトル
「川崎JBC 忘れられない二人の騎手」

JBC史上初めて2日間に分けて開催された
2006年、川崎でのJBC2競走。
例年のスプリントがマイルになったり、
とにかく異例なことばかりのJBCだった。
その一方で、地元のJリーグチーム、
川崎フロンターレの協賛レースが行われ、
パドックで馬を引く厩務員から
誘導馬の鞍上の厩務員までもがフロンターレの
ユニフォーム姿で登場するという、
いい意味で川崎らしい演出もあったのだが。

この年のJBC、
私は自分のサイト名で
取材パスを頂く機会に恵まれた。
普段とは違う距離感、角度で、
馬や騎手、調教師、厩務員らの喜怒哀楽に
接する機会を得て、
非常に勉強になった2日間でもあった。
そんな中で見た川崎JBC、
当時、非常に印象に残った二人の騎手について
書いてみたい。


1.山本茜(名古屋)

山本茜

初日、11月2日(木)のメインレースは
JBCマイル。
パドックに停止命令の声がかかり、
照明灯に照らされた14頭が
その歩みを一瞬止める。
整列し、一礼した騎手たちがそれぞれの騎乗馬に
小走りに向かい、馬に跨る。

パドックから細い馬道を通り、
検量室の前を通って、馬場に出る。
私はその細い馬道の脇で
出走する人馬を見ていた。
この場所はパドック側から続く芝生があり、
カメラマンたちが馬や騎手の表情を
追いかけている。
私は馬上のジョッキーたちの表情を見ていた。
大レースを前に緊張感を隠せない者、
気合のこもった表情を見せる者、
ポーカーフェイスを崩さない者、
その様子は色々だ。

ところが、である。
1人だけ馬上で不敵な笑みを浮かべる騎手がいた。
G1レース独特の雰囲気の中に自らがいることを
楽しんでいるかのような笑顔。
驚いた。
前年の同時期にデビューしたばかりの騎手が
大レースで見せる表情とはとても思えなかった。
私の隣で撮影していたカメラマンが思わずつぶやく。
「笑ってたよ、山本茜・・・」
大きなレースで騎乗しても緊張することはありません、
むしろ楽しいです、
と何かのメディアでそう答えていたのを
記憶している。
でもその言葉は本当だったのだ。
何かと注目を集めてしまう女性騎手。
しかし、その注目度の高さも
プレッシャーになってはいないのだろう。
だからあんな笑みを浮かべていられるのだ。
きっと、そうに違いない。

このレース、私は内田博幸騎乗の
ナイキアディライト(船橋)に注目し、
馬券を買っていた。
マイル戦ならきっと楽にハナを奪えて、
持ち前のスピードで粘りこんでくれるに違いない。
しかし、私のその期待は
あっさりと打ち破られてしまうことになる。
そのナイキアディライトに
キングズゾーンが競りかける展開となったのである。
そのキングスゾーンの鞍上はあの不敵な笑みの山本茜。
当時は南関東のNO.1ジョッキーだった内田博幸に
競りかけていく若手女性騎手がいようとは・・・。

ナイキアディライトは3~4コーナーで既に脚色が怪しくなり、
馬群に飲み込まれてしまう。
きっと山本茜とキングズゾーンのせいに違いない。
そのキングズゾーンも途中で脚が
なくなってしまったのだが。
この2頭、先着したのはキングスゾーン(8着)。
ナイキアディライトはキングスゾーンから
3/4馬身差の9着だった。
南関東トップジョッキーに果敢に競りかけて
先着してしまった若手女性騎手。
凄い騎手が愛知にいたモンだ。
彼女の笑みとハナ争いに加わる様子の映像が
頭の中で何度もVTR再生されていたのを思い出す。

山本茜は現在、ニュージーランドで武者修行中。
来年の地元、名古屋でのJBCまでには
帰ってくるのだろうか?
あの日の果敢なレースぶり、
不敵な笑みを是非とももう一度見たいのだが・・・。


2.岩田康誠(JRA)

岩田康誠

翌3日(金)のメインレースは
JBCクラシック。
優勝したのはタイムパラドックス。
このレース、2連覇となったこの馬。
既に8歳になっていた。
高齢馬となっても日本中の競馬場を飛び回り
活躍するそのタフさには頭が下がる。
凄い馬だなあ・・・、
という感想があちらこちらで聞こえてくる。

1着でゴール板通過後、
更にもう一回りし、
スタンドのファンに向かって
ガッツポーズを見せる鞍上の岩田康誠。
何人かのカメラマンが
その様子を撮るべく馬場に出る。
私もその後に続いた。

しかし、戻ってきた岩田の顔に
笑顔は全くなかった。
何となく青ざめているようにさえ見える。
厩務員が岩田とタイムパラドックスのところに
やってくる。
出迎えた厩務員に岩田が最初に話したのは
こんな一言だった。

「審議、大丈夫かなあ?」

着順掲示板に審議ランプがついている。
2周目第3コーナーで
マズルブラスト(船橋)の進路が狭くなったことに
ついての審議だ、とのアナウンス。
大型ビジョンにレース映像が流れる。
2周目第3コーナー、
マズルブラストが躓いて後退する様子が映し出される。
そのマズルブラストの横にいたのは・・・、
タイムパラドックスだった。
岩田は自分が審議対象となっていることに
気がついていたのだ。

長い審議の結果は「失格馬及び降着馬はなし」との判定。
岩田康誠・タイムパラドックスの優勝は確定した。
採決室から岩田が戻ってくる。
口取り、勝利騎手インタビュー、表彰式、
この間、岩田が笑顔を見せることはなかった。
それどころか、
他の馬の走行を邪魔してしまったことへの
反省の弁ばかりが口から出てくる。
とても優勝騎手とは思えなかった。
反省し、落胆しているかのようにさえ、
私には見えた。

栗東などに出入りしている訳ではないので、
普段の「岩田康誠」がどんな人物であるか、
私はよく分からない。
しかし、あのレース後の彼の様子を見る限り、
「競馬」というものに対しては
とにかく真面目な人間であることだけは理解できた。
兵庫でトップを取り、
JRA移籍後も常にリーディング上位争いに
加わるほどの騎手なのだから、
当然のことなのかもしれないが。

その4日後のグリーンチャンネルで、
川崎で見た時とは
全く別人の岩田康誠を目撃することになる。
デルタブルースの馬上でマイクを向けられ、
馬を指差しながら
「ベリーハッピー!!ベリーハッピー!!
スーパーホース!!スーパーホース!!」
と叫ぶ岩田康誠。
オーストラリア伝統のG1、
メルボルンカップを制したのだ。
その様子を見ながら、
川崎で見た彼の青ざめた表情を思い出した。
あれほどまで「競馬」に真面目な男だから、
こうした舞台でもチャンスをモノにすることが
出来るに違いない。
トップジョッキーの貴重な一面を見ることができた
瞬間だった。


今年の園田ではどの騎手がどんな驚きを
我々に与えてくれるのか?
JBCは名馬とともに名手たちが
その技を見せてくれる機会でもある。
彼らの手綱捌きも楽しみに園田に足を運びたい。

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プロフィール

菅野一郎
(かんのいちろう・本名同じ)
「もっと競馬をやりたいな」で、
「第1回Gallopエッセー大賞(2005年)」において、
佳作を受賞。
現在、競馬読み物Webサイト
「WEEKEND DREAM」管理人を務める。
時には厳しく、時には温かく愛情を込めて、「競馬の未来」を語ります。

※「プロフィール詳細・経歴」もご覧ください

私・菅野へのご連絡は以下のメールアドレスまでお願いします。
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