(重賞回顧)2008年第55回日本テレビ盃(船橋)~優勝馬:ボンネビルレコード~

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地方競馬を中心に競馬を見ている人にとって、
地元重賞の常連馬が中央競馬に移籍してしまうというのは
寂しいものであるに違いない。
ボンネビルレコードとという馬も
中央に移籍した当初は、
同様の事を思った人は少なくなかっただろう。
2005年の黒潮盃、東京記念、
2006年のサンタアニタトロフィー、
そして2007年の金盃。
この時点で南関東の重賞4勝を挙げている。
中央に移籍したのはその金盃の後だった。

その南関東の重賞では「主役」級の存在だったボンネビルレコードだが、
中央に移籍後も意外な形で南関東のファン達を驚かせることになる。
移籍した2007年の帝王賞に
「JRA所属馬」として戻ってきたボンネビルレコードは、
ブルーコンコルドを破ってG1(Jpn1)タイトルを獲得してしまったのだ。
これは決してフロックではなかった。
翌年のかしわ記念でも再びブルーコンコルドを破ってG1(Jpn1)2勝目。
南関東のファンが喜んだのは、
ボンネビルレコードが単に古巣の南関東で
G1(Jpn1)タイトルを獲得したからではない。
手綱を取っていたのが的場文男騎手(大井)だったからである。
大井競馬所属時からの名コンビは、
ボンネビルレコードが中央に移籍して以降も
南関東でのレースで出走する時は継続された。
中央競馬の厩舎関係者も
的場文男騎手の手腕を頼りにしていたに違いない。

この年の秋はこの日本テレビ盃から始動となったボンネビルレコード。
鞍上はやはり的場文男騎手だった。
その日本テレビ盃でボンネビルレコードと的場文男騎手は
大変なパフォーマンスを見せて、
船橋競馬場に集まったファンを驚かせることになる。
前走の帝王賞で敗れたフリオーソを直線で交わして先頭に立った
ボンネビルレコード。
そのまま先頭でゴール板を駆け抜けたが、
走破タイムに誰もが驚きの声を挙げた。
ダート1800メートル1分47秒8。
こんなタイムは当時のJRAでも出ていない。
JRAを含めた日本レコードタイムをマークしてしまったのだ。

当時「JRA所属馬」だったボンネビルレコードだが、
南関東のファンはきっと地元馬のように思っていたに違いない。
この日の船橋に集まったファンは
ボンネビルレコードと的場文男騎手に大きな歓声を贈った。
敗れたフリオーソこそが地元・船橋の所属馬だったが、
そんな事を気にする様子は全くない。
「地元の」ボンネビルレコードが大変なレコードタイムで優勝した。
レース後の船橋競馬場はそんな雰囲気が漂っていた。

昨年の春、
ボンネビルレコードでは中央から再び南関東に戻ってきた。
コンビを組むのはやはり的場文男騎手。
ボンネビルレコードが9歳となった今年も
このコンビは続いている。
さすがにこの日本テレビ盃の時のような走りは出来なくなった。
だがそれでも帝王賞で4着に入り、
サンタアニタトロフィーでは3着と馬券圏内を確保している。
名コンビは今だ健在だ。
そしてあの日本テレビ盃でマークした1分47秒8は
2009年のアンタレスSでウォータクティクスが同タイムで優勝し、
「JRAレコード」となったものの、
このタイムを上回るタイムを叩き出した馬は
地方でも中央でも未だに出現していない。

2008年9月23日(火・祝)
船橋10R
第55回日本テレビ盃(Jpn2)
船橋・ダート1800メートル

1着5枠 8番ボンネビルレコード(JRA・58・的場文) 1分47秒8
2着3枠 3番フリオーソ(船橋・58・川島正) 3/4
3着8枠14番サンライズバッカス(JRA・57・佐藤哲) 5
4着1枠 1番コアレスデジタル(船橋・56・左海誠) 6
5着3枠 4番ミツアキタービン(笠松・56・東川公) 3
 

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プロフィール

菅野一郎
(かんのいちろう・本名同じ)
「もっと競馬をやりたいな」で、
「第1回Gallopエッセー大賞(2005年)」において、
佳作を受賞。
現在、競馬読み物Webサイト
「WEEKEND DREAM」管理人を務める。
時には厳しく、時には温かく愛情を込めて、「競馬の未来」を語ります。

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