(重賞回顧)2005年第50回有馬記念~優勝馬:ハーツクライ~
mixiチェック
12月下旬と言えば厳寒期。
朝夕の冷え込みはかなりのモノとなる。
中間、栗東トレーニングセンターで積雪があったという
ニュースを耳にしたことを記憶している。
人間と同様、
馬にとってもこの時期は決していい時期ではないだろう。
寒さによって体が硬くなりがちで、
思わぬ事故の原因となる可能性もある。
この時期に国内最高峰のG1レースを開催することに
異議を唱える「国際派」の競馬評論家も少なくない。
だが一方でその年最後のJRA開催日なのだ。
「一年の終わり」を日本人は非常に重視する。
だからこそどんなに寒くても、
1年の競馬を締めくくるのは
この有馬記念というG1レースでなければならない。
極めて日本人的な発想だ。
だがシンボリクリスエスとゼンノロブロイで
前3年の有馬記念を制しているオリビエ・ペリエ騎手は
「有馬記念に初めて騎乗した時から、
日本人にとって、日本の競馬ファンにとって、
この時期に行われる有馬記念というレースが
どんなに重要なレースなのか、肌で感じ続けてきた」
とあるスポーツ紙のインタビューで答えていた。
海外における「競馬の常識」を知る外国人騎手たちの「日本競馬の常識」、
そして「有馬記念というレースについての常識」への理解の高さには
いつも驚かされる。
そしてこの年の有馬記念もそうだった。
ペリエ騎手と同じくフランスからやってきて、
日本の競馬を知り尽くしたクリストフ・ルメール騎手。
彼も有馬記念の大切さを知っていたからこそ、
こんなレースが出来たに違いない。
前走のジャパンカップではアルカセットとの死闘の末に2着。
ハーツクライの武器と言えば、
後方から鋭く追い込む末脚だ。
このジャパンカップでもルメール騎手は
ハーツクライのこのセールスポイントを最大限に活かした
レースぶりを見せた。
だが今度はその末脚比べでも勝てないかもしれない相手との戦いに
挑まなけれなならない。
その相手の名前はディープインパクト。
デビューから無敗で牡馬クラシック3冠を制して
早くも「日本競馬史上最強」と呼ばれたディープインパクトの末脚は、
鞍上の武豊騎手が「飛ぶ」という表現を用いるほどのレベルだった。
きっと悩んだ上での決断であったに違いない。
一か八かの作戦だったのだろう。
「この年最後のレース」なのはディープインパクトだけではない。
ハーツクライだって同じなのだ。
だからルメール騎手はハーツクライをいつもの馬群後方ではなく、
好位3~4番手で折り合わせる競馬を選択した。
小回り中山での勝負どころとなる3コーナー過ぎからの動き出しも
「ディープインパクトよりも先に」を意識した形となったルメール騎手。
ディープインパクトに勝つには、この方法しかなかっただろう。
最後の直線半ばでコスモバルクを交わして
先頭に立ったハーツクライ。
ディープインパクトはまだ来ない。
いつ来るのか?
一体いつやって来るのか?
ディープインパクトの末脚を警戒したルメール騎手も、
ディープインパクトの勝利を期待したファン達も、
その瞬間に考えた事は同じであったに違いない。
そのディープインパクトは確かに飛んできた。
だがハーツクライにも余力がある。
その余力はディープインパクトに
ハーツクライの前に出ることを許さなかった。
ルメール騎手の手が上がる。
場内に悲鳴が上がる。
そして場内が不思議なほど静まり返る。
ディープインパクト初黒星。
そしてハーツクライが大仕事をやってのけた瞬間だった。
「負ける筈がない」と誰もが思ったディープインパクトが敗れる。
そして4年連続で外国人騎手が有馬記念で優勝。
日本の競馬関係者にとっても、
そしてファンにとっても衝撃の結果だったに違いない。
でもペリエ騎手やルメール騎手が
この有馬記念というレースの持つ意味を、
一部の日本人たちよりも理解していたからこその結果ではないのか?
この日のルメール騎手の騎乗に、
忘れていた何かを思い出した人もいたのではないだろうか?
2005年12月25日(日)
中山9R
第50回有馬記念(G1)
中山・芝2500メートル
1着5枠10番ハーツクライ(57・ルメール) 2分31秒9
2着3枠 6番ディープインパクト(55・武豊) 1/2
3着7枠14番リンカーン(57・横山典弘) 1 1/4
4着2枠 4番コスモバルク(57・五十嵐冬樹)1 1/4
5着7枠13番コイントス(57・北村宏司) 1/2
関連記事
- (重賞回顧)2011年第12回ジャパンカップダート~優勝馬:トランセンド~
- 「これがドバイワールドカップ2着の実力!!」と言ってしまうのは安易すぎるだろうか...
- (重賞回顧)2006年JBCマイル(第6回JBCスプリント、川崎)~優勝馬:ブルーコンコルド~
- 11月5日(月)は川崎競馬場でJBC競走(クラシック・スプリント・レディスクラシ...
- (重賞回顧)2003年第128回天皇賞・秋~優勝馬:シンボリクリスエス~
- 「どうしてそんな競馬になってしまったのか?」について、改めて書くことに何の意味も...
- (重賞回顧)2004年第65回菊花賞~優勝馬:デルタブルース~
- 初出走、初騎乗、初勝利、初めての重賞勝利、そして初めてのG1勝利・・・。今日の日...
- (重賞回顧)2007年第12回秋華賞~優勝馬:ダイワスカーレット~
- 今改めてこのレースの単勝オッズを見て、ある事に気がついた。1番人気馬ウオッカは2...
- (重賞回顧)2010年第23回マイルチャンピオンシップ南部杯(盛岡)~優勝馬:オーロマイスター
- 4コーナーで驚きの声を挙げた人は多かったのではないか。セレスハント、オーロマイス...
- (重賞回顧)2005年第39回スプリンターズS~優勝馬:サイレントウィットネス~
- 「この馬、強いよ・・・」ゴールの瞬間、思わず呟いてしまった。サイレントウィットネ...
- (重賞回顧)2010年第56回オールカマー~優勝馬:シンゲン~
- 前年の天皇賞・秋以来の実戦がオールカマー。長期休養明けの一戦だった。重賞2勝を挙...
- (重賞回顧)2002年第56回セントライト記念~優勝馬:バランスオブゲーム~
- 2002年は新潟の競馬ファンにとって特別な年だった。新潟競馬場の入場門を入るとす...
- (重賞回顧)2002年第16回セントウルS~優勝馬:ビリーヴ~
- 今年2012年のダービージョッキー・岩田康誠騎手。2日(日)終了時点で、JRAで...
トラックバック(0)
このブログ記事を参照しているブログ一覧: (重賞回顧)2005年第50回有馬記念~優勝馬:ハーツクライ~
このブログ記事に対するトラックバックURL: http://weekenddream.jp/bin/mt-tb.cgi/14403