(重賞回顧)2000年第14回根岸S~優勝馬:ブロードアピール~
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東京競馬場のダート1200メートル戦。
現在は存在しないコース設定である。
コース改修以前に存在していた設定だ。
今ならダート1300メートル戦に近いかもしれない。
スタートするとすぐに3コーナー。
外枠の馬にはかなり不利な条件だった。
かつての根岸Sはこの東京・ダート1200メートル戦で行われていた。
施行時期も11月。
現在とは異なる。
今よりもダート短距離戦としての性格が濃いレース、
ということが言えるかもしれない。
このレース、注目を集めた地方所属馬がいた。
宇都宮の快速馬、ベラミロードである。
既に中央のファンにもお馴染みの存在だった。
前年のユニコーンSでゴールドティアラの2着。
その快速ぶりは古馬になって、
更に磨きがかかった。
前走の大井、東京盃でJRA勢を相手に優勝。
ダートグレードレースを制してしまったのだ。
当然、この根岸Sでも大きな注目を集めた。
しかし、枠順が発表になった時、
陣営と地方競馬ファンの多くはがっかりしたに違いない。
大外枠の8枠16番を引いてしまったのだ。
この枠からこの馬の快速ぶりを活かして逃げるには、
3コーナーまでにかなりの脚を使わなければならない。
実際のところ、そんなレースになった。
そしてエイシンサンルイス、
同じ地方・愛知のゴールデンチェリーとの激しい先行争いとなった。
この争いは4コーナーを回り、
直線に入っても続く。
直線でゴールデンチェリーが先行争いから脱落。
エイシンサンルイスとベラミロードはまだ競り合いが続いている。
後方からノボジャックが伸びてくる。
この3頭で決まるのか?
しかし場内のファンはその後ろの馬に目を向けていた。
ここまで全く名前が出てこない、
単勝1番人気馬、ブロードアピールである。
ベラミロードらがは激しい先行争いを繰り広げていた頃、
ブロードアピールは馬群の最後方にいた。
4コーナーから直線に向いても
そのポジションは変わらない。
府中の直線は長い。
だが長いと言ってもこんなに後ろからで届くのか?
しかもダートコースなのに・・・。
そんなファンの不安をよそに、
ブロードアピールは馬群の外を伸びてきた。
前にいるエイシンサンルイスやベラミロードたちとは
違うレースをしているようでもあった。
しかしその差は徐々に詰まっていく。
そしてゴールの手前で、先行争いを制したエイシンサンルイスを交わす。
先頭に立つ。
更に1馬身1/4の差をつけた。
府中のダートで最後方から全ての馬をまとめて交わして、
先頭でゴール板を駆け抜けた。
ゴールの瞬間、
東京競馬場の場内は驚きの声に包まれた。
レース全体の上がり3ハロンは36秒0。
しかしブロードアピールは34秒3で上がってきた。
1秒7も速い上がりタイムである。
他馬が止まって見える、とはまさにこの事なのかもしれない。
衝撃的な瞬間だった。
ダートでこんな直線一気の競馬は
そう見られるものではない。
この日、府中でこの光景を見たファンは皆、
ある種の幸せを感じて家路についた。
私もその一人である。
2000年11月12日(日)
6回東京4日 天候: 曇 馬場状態: 良
11R
第14回東京中日スポーツ杯根岸S(G3)
東京:ダート 1200メートル
1着ブロードアピール(55・武幸四郎) 1分10秒1
2着エイシンサンルイス(56・太宰啓介) 1 1/4
3着ノボジャック(54・勝浦正樹) 1/2
4着ベラミロード(56・内田利雄) 3
5着トーヨーデヘア(54・的場均) 2 1/2
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