(重賞回顧)2008年第40回ばんえい記念(帯広)~優勝馬:トモエパワー~
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牡馬1000キロ。牝馬980キロ。
「パワー勝負」のばんえい競馬ではあるが、
これだけの荷物を引っ張るレースは年間を通して1つしかない。
それがばんえい競馬では最高峰のレース、ばんえい記念(BG1)。
帯広競馬場を本拠地とするファンでも
普段はなかなか目にすることが出来ない光景が繰り広げられる、
ばんえい競馬の中でも特別なレースである。
普段のレースならスタートした時の勢いで一気に駆け上がり、
そして駆け下りる第1障害。
しかしこのレースではほぼ全ての馬が脚を止める。
1トンもの積載重量を引いて2つの障害を乗り越え、
200メートル先のゴールを目指す為には、
この第1障害でも一度は息を入れる必要がある。
どの馬も引いている荷物は自分の体重とあまり変わらないのだ。
その先の第2障害をクリアするためにも
スタミナを温存しながらレースを進めなければならない。
どの馬も少し動いては止まる。
そんな動きを繰り返しながら、
最大の難所である第2障害へゆっくりと近づいていく。
だがこの年のばんえい記念はこの段階で異変が起きていた。
その手前の第1障害をクリアするのに手こずっていた馬がいたのだ。
その馬の名はダイニハクリュウ。
これが重賞初挑戦だった。
いきなりの一線級相手の競馬である。
敵は強力な他の出走馬たちだけではない。
このレース以前に自身が経験している最も重い積載重量は730キロ。
この日は更に270キロも重い荷物を引かなければならなかったのだ。
いつもなら軽くクリア出来る第1障害も
この日のダイニハクリュウには高い壁のように思えていたに違いない。
レースは近年でも珍しい5分を超えるタイムでの決着となった。
タイムが遅いからといって、
「レベルが低い」などと思ってはいけない。
積載重量だけではなく、
馬場そのものもパワーを要求される状態だったのだから。
そんな我慢比べに似たパワー勝負を制して
最初にゴール板を駆け抜けたのは前年の覇者トモエパワー。
「力比べなら任せろ」と言わんばかりに
懸命の粘りを見せるミサイルテンリュウをねじ伏せる。
そして牝馬のスターエンジェルがその後にゴール板を通過した。
帯広競馬場でこのレースを見ているほとんどの人が馬券を買っている。
その馬券の当たり・ハズレは
スターエンジェルがゴール板を通過した時点で判明している。
だが誰もその場を動こうとはしない。
馬券の対象から外れた4着以下の馬たちが続々とゴール板を通過する。
その度に拍手と歓声が上がる。
単勝2番人気に支持されていたナリタボブサップは6着。
3番人気でこれが引退レースだったアンローズは7着。
馬券を買っていた人にとっては様々な想いがあったに違いない。
それでも2つの山と200メートルの距離を走り抜けた馬たちに拍手と歓声が起こる。
これがばんえい記念なのだ。
「馬券」というファンの側にある一つの勝負を超越した所に
もっと大きなドラマが出来上がっている。
ヨコハマイサムが9番目にゴール板を通過。
走破タイムは既に8分を超えている。
だがまだ1頭だけゴールにたどり着いていない馬がいる。
第1障害の時点でモタついていたダイニハクリュウである。
何とか到達した第2障害と格闘をしている最中だった。
きっと体力の限界を超えていたに違いない。
障害の一番高い所に何とか脚を伸ばす。
場内からダイニハクリュウに声援が飛ぶ。
その脚が山の下りに踏み込んでいく。
馬体が、続いてソリが下り坂に差し掛かる。
大きな歓声が上がる。
「もう少しだ!あともう少しだ!!」
時々止まりながらも一歩一歩ゴールを目指すダイニハクリュウ。
ようやくゴール板に差し掛かる。
場内の歓声が大きくなる。
ソリの一番後ろがゴール板を通過した時、
帯広競馬場は大きな拍手と歓声に包まれた。
記録上はタイム超過の為に失格となったダイニハクリュウ。
だが帯広競馬場で見ていた人にとって、
そんな公式記録は何の意味も持たない。
ダイニハクリュウはフラフラになりながらも2つの障害を乗り越えて、
1トンの荷物を200メートル先まで運んだのだから。
そしてそのゴールの瞬間を目撃しているのだから。
ばんえい記念当日の帯広競馬場には道内はもちろん、
全国各地からばんえい競馬ファンが集結する。
帯広競馬場に集まった人たちは皆、
この日にしか見ることが出来ないドラマがあることを知っている。
2008年3月23日 (日)
ばんえい・帯広10R
第40回ばんえい記念(BG1)
帯広・ダート200メートル(直線)
1着1枠 1番トモエパワー(1000・西弘美) 5分35秒8
2着8枠 9番ミサイルテンリュウ(1000・鈴木恵) 6分1秒9
3着7枠 7番スターエンジェル(980・安部憲) 6分22秒2
4着3枠 3番スーパークリントン(1000・藤野俊) 6分25秒3
5着6枠 6番シンエイキンカイ(1000・大口泰) 6分45秒6
「パワー勝負」のばんえい競馬ではあるが、
これだけの荷物を引っ張るレースは年間を通して1つしかない。
それがばんえい競馬では最高峰のレース、ばんえい記念(BG1)。
帯広競馬場を本拠地とするファンでも
普段はなかなか目にすることが出来ない光景が繰り広げられる、
ばんえい競馬の中でも特別なレースである。
普段のレースならスタートした時の勢いで一気に駆け上がり、
そして駆け下りる第1障害。
しかしこのレースではほぼ全ての馬が脚を止める。
1トンもの積載重量を引いて2つの障害を乗り越え、
200メートル先のゴールを目指す為には、
この第1障害でも一度は息を入れる必要がある。
どの馬も引いている荷物は自分の体重とあまり変わらないのだ。
その先の第2障害をクリアするためにも
スタミナを温存しながらレースを進めなければならない。
どの馬も少し動いては止まる。
そんな動きを繰り返しながら、
最大の難所である第2障害へゆっくりと近づいていく。
だがこの年のばんえい記念はこの段階で異変が起きていた。
その手前の第1障害をクリアするのに手こずっていた馬がいたのだ。
その馬の名はダイニハクリュウ。
これが重賞初挑戦だった。
いきなりの一線級相手の競馬である。
敵は強力な他の出走馬たちだけではない。
このレース以前に自身が経験している最も重い積載重量は730キロ。
この日は更に270キロも重い荷物を引かなければならなかったのだ。
いつもなら軽くクリア出来る第1障害も
この日のダイニハクリュウには高い壁のように思えていたに違いない。
レースは近年でも珍しい5分を超えるタイムでの決着となった。
タイムが遅いからといって、
「レベルが低い」などと思ってはいけない。
積載重量だけではなく、
馬場そのものもパワーを要求される状態だったのだから。
そんな我慢比べに似たパワー勝負を制して
最初にゴール板を駆け抜けたのは前年の覇者トモエパワー。
「力比べなら任せろ」と言わんばかりに
懸命の粘りを見せるミサイルテンリュウをねじ伏せる。
そして牝馬のスターエンジェルがその後にゴール板を通過した。
帯広競馬場でこのレースを見ているほとんどの人が馬券を買っている。
その馬券の当たり・ハズレは
スターエンジェルがゴール板を通過した時点で判明している。
だが誰もその場を動こうとはしない。
馬券の対象から外れた4着以下の馬たちが続々とゴール板を通過する。
その度に拍手と歓声が上がる。
単勝2番人気に支持されていたナリタボブサップは6着。
3番人気でこれが引退レースだったアンローズは7着。
馬券を買っていた人にとっては様々な想いがあったに違いない。
それでも2つの山と200メートルの距離を走り抜けた馬たちに拍手と歓声が起こる。
これがばんえい記念なのだ。
「馬券」というファンの側にある一つの勝負を超越した所に
もっと大きなドラマが出来上がっている。
ヨコハマイサムが9番目にゴール板を通過。
走破タイムは既に8分を超えている。
だがまだ1頭だけゴールにたどり着いていない馬がいる。
第1障害の時点でモタついていたダイニハクリュウである。
何とか到達した第2障害と格闘をしている最中だった。
きっと体力の限界を超えていたに違いない。
障害の一番高い所に何とか脚を伸ばす。
場内からダイニハクリュウに声援が飛ぶ。
その脚が山の下りに踏み込んでいく。
馬体が、続いてソリが下り坂に差し掛かる。
大きな歓声が上がる。
「もう少しだ!あともう少しだ!!」
時々止まりながらも一歩一歩ゴールを目指すダイニハクリュウ。
ようやくゴール板に差し掛かる。
場内の歓声が大きくなる。
ソリの一番後ろがゴール板を通過した時、
帯広競馬場は大きな拍手と歓声に包まれた。
記録上はタイム超過の為に失格となったダイニハクリュウ。
だが帯広競馬場で見ていた人にとって、
そんな公式記録は何の意味も持たない。
ダイニハクリュウはフラフラになりながらも2つの障害を乗り越えて、
1トンの荷物を200メートル先まで運んだのだから。
そしてそのゴールの瞬間を目撃しているのだから。
ばんえい記念当日の帯広競馬場には道内はもちろん、
全国各地からばんえい競馬ファンが集結する。
帯広競馬場に集まった人たちは皆、
この日にしか見ることが出来ないドラマがあることを知っている。
2008年3月23日 (日)
ばんえい・帯広10R
第40回ばんえい記念(BG1)
帯広・ダート200メートル(直線)
1着1枠 1番トモエパワー(1000・西弘美) 5分35秒8
2着8枠 9番ミサイルテンリュウ(1000・鈴木恵) 6分1秒9
3着7枠 7番スターエンジェル(980・安部憲) 6分22秒2
4着3枠 3番スーパークリントン(1000・藤野俊) 6分25秒3
5着6枠 6番シンエイキンカイ(1000・大口泰) 6分45秒6
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