(重賞回顧)2003年第48回京阪杯~優勝馬:チアズブライトリー~

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当時、京阪杯は1800メートル戦で行われていた。
マイネルモルゲンがハナに立って流れたこのレース、
1000メートルは60秒7。
この距離の古馬重賞としては緩い流れと言えるだろう。

この日の京都競馬場上空は雨。
そんな雨の中、
レースは緩い流れのまま、
淡々と3コーナーの坂を登る。
そして下る。
その時だった。
外からマクリ気味に1頭がスパート。
これまでの流れを全てぶち壊すような仕掛けだった。

その馬の名はチアズブライトリー。
単勝183倍の14番人気。
誰も注目していなかったこの馬が4コーナーで先頭へ。
雨で走りにくい馬場状態の中、
他の馬、他の騎手たちが慌ててチアズブライトリーを追いかける。
しかしその差は詰まらない。
チアズブライトリーがゴール板にたどり着いた時、
2着のダンツジャッジ以下はまだ4馬身後方だった。

単勝万馬券の大波乱。
しかもレースの流れを全てぶち壊す、
早めのスパートを決めての勝利。
「何ということをしてくれるんだ!!」と思いながら、
ハズレ馬券を握り締めた人も多かっただろう。
だが同時に、
チアズブライトリーの鞍上の名前を確認して
「これは仕方が無い」と思った人も多かったに違いない。

手綱を取ったのは本田優。
彼を「空気の読めない騎手」と呼ぶ人たちが
いたことを記憶している。
人気馬で決まりそうなレースの時に
低評価の馬で馬券に絡む騎手として
知られていた。
この京阪杯はそんな彼の最も特徴的なレースと
言えるだろう。
単に14番人気の馬で重賞を勝ってしまったからではない。
途中で流れをぶち壊すようなスパートを決め、
そして重賞タイトルを奪い取ってしまったのだから。

「空気の読めない騎手」
これは決して彼を批判しての表現ではない。
勝負事に「空気」など関係がないことは、
「空気の~」というファンたちもよく理解していた。
彼の個性を巧く言い表した褒め言葉だったのだ。

2007年に調教師試験に合格して引退。
その年の4月に東京競馬場で行われた
引退した騎手たちによって行われた
「ジョッキーマスターズ」で2着に入った本田優は、
そのレース後にこんなコメントを残した。

「本当は勝てたのですけど、
引退したばかりの自分が差し切って勝ってしまっては申し訳ない。
空気を読んで2着にしておきました。」

もちろんジョークのつもりだろう。
でも「空気の読めない騎手」という、
この評判は本人も知っていたようである・・・。

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2003年11月29日(土) 5回京都7日  天候:小雨  馬場状態:不良
11R  第48回京阪杯
3歳以上・オープン・G3(別定) (混)(特指)  芝・外 1800m   18頭立
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着枠 馬  馬名               性齢 騎手     斤量 タイム  3F  人体重     廐舎
------------------------------------------------------------------------------
1 8 18  チアズブライトリー 牡 5 本田優   56  1.49.1 36.2 14 458 (栗)山内研二
2 3  5  ダンツジャッジ   牡 4 池添謙一  56  1.49.8 36.4  3 516 (栗)山内研二
3 8 17  タイムトゥチェンジ 牡 5 橋本美純  56  1.49.8 35.8 10 468 (栗)鶴留明雄
4 4  8  テンザンセイザ   牡 5 藤田伸二  56  1.49.9 36.7  1 486 (栗)藤原英昭
5 6 11  ヴィータローザ   牡 3 角田晃一  54  1.50.0 36.9  2 466 (栗)橋口弘次
6 8 16  アサカディフィート セ 5 熊沢重文  56  1.50.1 37.2  5 516 (栗)鶴留明雄
7 3  6  トーホウシデン   牡 6 幸英明   57  1.50.2 36.8  4 424 (美)田中清隆
8 2  4 $エイシンスペンサー 牡 5 ヒューズ  56  1.50.4 37.2  8 498 (栗)坂口正則
9 5  9 *マイネルモルゲン  牡 3 和田竜二  54  1.50.4 37.6  7 462 (美)堀井雅広
10 6 12  ハギノスプレンダー 牝 7 松田大作  54  1.50.4 36.9 17 460 (栗)鮫島一歩
11 4  7  ジョウテンブレーヴ 牡 6 小林徹弥  58  1.50.7 37.6  9 496 (美)相沢郁 
12 7 15  アンクルスーパー  牡 6 川島信二  56  1.50.7 37.1 15 510 (栗)田島良保
13 5 10  ビッグゴールド   牡 5 常石勝義  56  1.50.8 37.4 11 460 (栗)中尾正 
14 2  3  エリモピクシー   牝 5 渡辺薫彦  54  1.50.8 37.8 13 452 (栗)沖芳夫 
15 7 13  アグネススペシャル 牡 6 武幸四郎  56  1.51.1 38.2 12 438 (栗)藤岡健一
16 1  2  テイエムリキサン  牡 3 秋山真一  54  1.51.3 38.0  6 486 (栗)福島勝 
17 7 14  メイプルロード   牝 3 北村浩平  52  1.52.6 39.4 16 450 (栗)田所秀孝
消 1  1  サンライズシャーク 牡 5 四位洋文  56  ------ ---- -- --- (栗)崎山博樹
------------------------------------------------------------------------------
LAP :12.8-11.5-11.8-12.3-12.3-12.1-11.7-12.1-12.5
通過:36.1-48.4-60.7-72.8  上り:73.0-60.7-48.4-36.3  平均:1F:12.12 / 3F:36.37
単勝   18 \18300
複勝   18 \2580 / 5 \190 / 17 \1380
枠連   3-8 \1270 (5)
馬連   05-18 \46010 (58)
ワイド 05-18 \8140 (56)/ 17-18 \32920 (107)/ 05-17 \2960 (28)
馬単   18-05 \151900 (140)
3連複 05-17-18 \442480 (343/680)


(JRA-VANより
「TARGET frontier JV」使用)

※レース結果・払戻金については
主催者発表のものを必ずご確認ください。

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プロフィール

菅野一郎
(かんのいちろう・本名同じ)
「もっと競馬をやりたいな」で、
「第1回Gallopエッセー大賞(2005年)」において、
佳作を受賞。
現在、競馬読み物Webサイト
「WEEKEND DREAM」管理人を務める。
時には厳しく、時には温かく愛情を込めて、「競馬の未来」を語ります。

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