(重賞回顧)2006年第50回阪急杯~優勝馬:ブルーショットガン~

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中央競馬における「出会いと別れの季節」は
一般社会よりも1ヶ月早い。
引退が決まった騎手は、
2月の最後の開催日が騎手として
最後にレース騎乗が出来る日となる。

2006年2月26日(日)。
この日、あるG1レースの常連騎手が
ラスト騎乗の日を迎えた。
その騎手の名は松永幹夫。
イソノルーブルで制した1991年のオークス、
キョウエイマーチで逃げ切った1997年の桜花賞、
ヘヴンリーロマンスで決めた「天覧競馬」となった
2005年の天皇賞・秋など、
忘れられないシーンをたくさん見せてもらった騎手が、
調教師転身の為にステッキを置く日がやってきた。
しかしこの日、引退する前に松永幹夫には達成しておきたい
大きな記録が残っていた。

前日の土曜日に2勝を挙げ、
この時点でJRAでの通算勝ち星は1398勝。
あと2勝で1400勝になる。
松永幹夫はこの区切りの勝利を達成して、
第2の人生に向かうことは出来るのか?
ラスト騎乗の日の騎乗馬は6鞍である。

2Rのスティーブバローズは2番人気。
3Rのメイショウソーラーも2番人気。
6Rのセイウンワキタツは1番人気。
ファンは松永幹夫の勝利を信じた。
しかし、勝負の世界は甘くはない。
2Rは7着、3Rと6Rは2着。
9Rでは5番人気のナイキアースワークに騎乗したが、
6着に敗れた。
残るは2鞍。
1400勝を達成する為には、
この2鞍でいずれも勝利を挙げなければならない。

最終12Rのフィールドルージュはメンバー中、
抜けた実力の持ち主だ。
ここはまず勝てるだろう。
問題はメイン11Rの阪急杯。
騎乗馬のブルーショットガンは
オープン昇級後の2戦は淀短距離S8着に
シルクロードS13着。
オープンクラスではここまで全く通用していない。
この馬で勝つのはとても無理だ・・・。
単勝オッズは38.0倍の11番人気。
諦めムードのファンも多かったに違いない。
しかし最後の直線で皆、驚きの声を上げることになる。

直線を松永幹夫騎乗のブルーショットガンが
猛然と追い込んできたのである。
渾身のステッキに応えたブルーショットガンは
コスモシンドラーを1/2馬身抑えて先頭でゴール。
当時、このレースを中山競馬場のターフビジョンで見ていたが、
中山でも大歓声に包まれた。
きっと阪神競馬場も大変な騒ぎだったに違いない。

そして最終12R。
阪神競馬場の映像から、
「フィールドルージュ以外の馬が勝つ筈はない」
という雰囲気が伝わってくるのを感じた。
そのフィールドルージュは
2着以下に3馬身1/2差をつけて快勝。
ラスト騎乗でJRA通算1400勝達成となった。

阪急杯でのブルーショットガンの激走がなければ、
この記録達成はなかった。
1399勝とあと1勝及ばずに
引退式を迎えていたに違いない。
もしかするとブルーショットガンが松永幹夫の為に、
それを許すまいと踏ん張ったのではないか。
見ているとそんな気分になる雰囲気が
この騎手には常にあった。
現在はレッドディザイアなどを管理している
調教師として活躍中だが、
このラスト騎乗の日は騎手時代の彼を象徴する1日のように
思えてならない。


2006年2月26日(日)
第50回阪急杯(G3)
阪神・芝1400メートル

1着5枠 9番ブルーショットガン(56・松永幹夫) 1分22秒5
2着7枠13番コスモシンドラー(55・安藤勝己) 1/2
3着6枠10番オレハマッテルゼ(56・柴田善臣) 1/2
4着2枠 3番スナークスズラン(54・モンテリーゾ) 1/2
5着1枠 1番ローエングリン(58・四位洋文) 1/2
 


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プロフィール

菅野一郎
(かんのいちろう・本名同じ)
「もっと競馬をやりたいな」で、
「第1回Gallopエッセー大賞(2005年)」において、
佳作を受賞。
現在、競馬読み物Webサイト
「WEEKEND DREAM」管理人を務める。
時には厳しく、時には温かく愛情を込めて、「競馬の未来」を語ります。

※「プロフィール詳細・経歴」もご覧ください


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