(重賞回顧)1999年第66回日本ダービー~優勝馬:アドマイヤベガ~

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馬にとっては一生に一度の舞台、ダービー。
その舞台に上がることが許される馬は
ごく僅かでしかない。
そのダービーを勝つのは更に至難の業となる。
だからこそ勝ちたい。
「ダービー馬のオーナーになりたい」と
「馬主」という立場になった人なら誰でも思う。

調教師も同じだろう。
「ダービートレーナー」は調教師にとって
大きな勲章だ。
そして競馬の世界では最も「花形」の職業と言える
騎手ももちろん、
ダービーを勝つことには特別な意味がある。
「ダービージョッキー」という勲章にこだわり続けた
乗り役は数知れない。
最後の直線で、
1番人気ナリタトップロード、2番人気アドマイヤベガ、
3番人気テイエムオペラオーの3頭が、
馬群の外で横一線に並ぶ瞬間が訪れた。
その瞬間、3人の乗り役は馬上で何を考えただろうか?

3頭の中で先に抜け出しを図ったのはテイエムオペラオー。
道中も常にこの2頭よりも前だった。
皐月賞でG1初制覇を果たした和田竜二騎手だが、
その瞬間の精神状態は
皐月賞とは全く異なるものであったに違いない。
そのテイエムオペラオーをナリタトップロードが交わす。
鞍上の渡辺薫彦騎手にとっても、これはチャンスだ。
当時はまだG1未勝利。
しかし最初のG1タイトル獲得がこのダービーとなるかも・・・。
無我夢中で馬を追い続けたに違いない。
まだダービーでの勝利がない二人。
この二人のどちらかを勝たせてあげたいと願う人も
多かったに違いない。
だが次の瞬間、勝負というものの非情さを教えられる。
勝負の神様の厳しさを突き付けられる。

「お前ら、まだまだ甘いんだよ」
笑いながらそうつぶやいているようにさえ思えた。
横一線の人気馬3頭の中で、
最後まで脚を貯めていたアドマイヤベガが
その貯金を使ってナリタトップロードを交わして先頭に立ち、
そのままゴール板を駆け抜けたのである。
結果論かもしれない。
だがダービーのゴールを目指して、
必死に馬を追い続けた和田竜二騎手と渡辺薫彦騎手に対し、
アドマイヤベガの武豊騎手は
追い出しをギリギリまで我慢して末脚を温存する余裕があったのである。
前年にスペシャルウィークでこのダービーを勝っている余裕だろうか?
その勝ちっぷりには憎らしささえ感じられる。

レース後、フジテレビの競馬中継では、
目を真っ赤に腫らした渡辺薫彦騎手の姿が映し出される。
勝ったと思っただろう。
だがこの敗戦は武豊騎手との力量の差が出た結果だ。
本人も分かっていたに違いない。
この様子を見た解説の故・大川慶次郎さんが優しい言葉を贈る。
「ユタカ君だってなかなかダービーを勝てなかったのだから」
確かに武豊騎手はデビューからダービーまで11年かかった。
当時はデビュー5年目だった渡辺薫彦騎手が勝てなくても
不思議なことは何もない。

「ダービージョッキー」
誰もが欲しい称号に違いない。
その称号を得る難しさが痛いほど感じられるダービーが
この1999年だったように思える。

1999年6月6日(日)
東京9R
第66回東京優駿(日本ダービー)(G1)
東京・芝2400メートル

1着1枠 2番アドマイヤベガ(57・武豊) 2分25秒3
2着6枠11番ナリタトップロード(57・渡辺薫彦) クビ
3着7枠14番テイエムオペラオー(57・和田竜二) 1 1/4
4着5枠 9番オースミブライト(57・蛯名正義) 2 1/2
5着1枠 1番ブラックタキシード(57・的場均) 1 3/4

 

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プロフィール

菅野一郎
(かんのいちろう・本名同じ)
「もっと競馬をやりたいな」で、
「第1回Gallopエッセー大賞(2005年)」において、
佳作を受賞。
現在、競馬読み物Webサイト
「WEEKEND DREAM」管理人を務める。
時には厳しく、時には温かく愛情を込めて、「競馬の未来」を語ります。

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