(重賞回顧)1999年第35回札幌記念~優勝馬:セイウンスカイ~

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G2戦となってから、
重要性が増した印象がある札幌記念。
その前2年の優勝馬エアグルーヴが
この札幌記念の新たな性格付けに果たした役割は大きい。
1997年はこの札幌記念を制した後は、
天皇賞・秋で牡馬を相手に伝統のG1タイトルを獲得。
翌1998年も札幌記念優勝後は
エリザベス女王杯3着、そしてジャパンカップ2着。
秋のG1戦線を占う上で、
ステップレースとして重要な役割を果たす事となった。

その札幌記念の主役の座はこの年、
エアグルーヴから前年の2冠馬セイウンスカイに受け継がれる。
別定59キロを背負うことになったが、
それでも負けは許されない一戦。
そのセイウンスカイはこのレースで
単なる勝ち負けだけではなく、
もう一つ大きな課題を抱えていた。

2年前のエアグルーヴ同様、
この札幌記念の後は天皇賞・秋に直行する。
その天皇賞・秋が行われるのは東京競馬場。
府中の長い直線で新たなG1タイトルを手にする為には、
これまでのような逃げ・先行のスタイルだけでは厳しい。
馬群の中団・後方からレースを進め、
直線で馬群から抜け出すような戦い方が求められる。
前哨戦となるこの札幌記念は、
そのテストの場となったのだ。
10頭立てのこのレース、
セイウンスカイは1コーナー、2コーナーともに7番手。
小回りの札幌競馬場だが、
鞍上・横山典弘騎手の頭の中では
東京競馬場の長い直線が浮かんでいたに違いない。

2コーナーまではその「テスト」は
順調に進んでいるように思えた。
しかし馬が我慢し切れなかったのか、
それとも府中と違って
小回りの札幌だからと横山典弘騎手が判断したのか、
セイウンスカイは向正面からポジションを上げていく。
3コーナーでは逃げるダイワカーリアンの直後2番手に。
ここから先は、普段通りのセイウンスカイだった。
直線でダイワカーリアンを交わして先頭に立つと、
後方から追い込んできたファレノプシスの追撃を凌いで
先頭でゴール板を駆け抜ける。
さすが2冠馬だ。
そう思ったファンも多いだろう。
だが一方で、
「この勝ち方だと府中では・・・」
と思った人もいるかもしれない。

「本番」天皇賞・秋ではこの札幌記念の経験が活きたのか、
中団からのレースとなったセイウンスカイ。
しかし直線で伸び切れすに5着に敗れた。
やはりこの馬に直線で決め手を活かす競馬は無理だったのか?
その答えはセイウンスカイ自身にしか分からないのかもしれない。
しかしこの札幌記念で後のG1戦に備える為に、
陣営が、そして横山典弘騎手がある課題を持って挑んでいたことだけは、
見ている我々にも理解できた。
その課題はセイウンスカイの個性を潰すものだったのかもしれない。
だがこの先のG1戦線の為には、
やらなければならない試みだったように思える。
そしてその結果、
セイウンスカイの個性が余計に際立つものになったように
私には思えた。

16日(火)に急死したセイウンスカイ。
その個性の強さは試行錯誤を繰り返した陣営や横山典弘騎手と共に
忘れることはないだろう。

1999年8月22日(日)
札幌11R
第35回札幌記念(G2)
札幌・芝2000メートル

1着3枠 3番セイウンスカイ(59・横山典弘) 2分0秒1
2着7枠 8番ファレノプシス(55・武豊) 1/2
3着2枠 2番ツクバシンフォニー(56・四位洋文) 4
4着6枠 6番ダイワテキサス(57・蛯名正義) クビ
5着4枠 4番ダイワカーリアン(56・岡部幸雄) 頭

 

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プロフィール

菅野一郎
(かんのいちろう・本名同じ)
「もっと競馬をやりたいな」で、
「第1回Gallopエッセー大賞(2005年)」において、
佳作を受賞。
現在、競馬読み物Webサイト
「WEEKEND DREAM」管理人を務める。
時には厳しく、時には温かく愛情を込めて、「競馬の未来」を語ります。

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