(独り言)「気持ち」の有無

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荒尾市の前畑淳治市長が議会で「荒尾競馬廃止」を表明した5日(月)、
Twitterでこんな話を目撃した。

2006年の年末に勃発したばんえい競馬の存廃問題。
「帯広市単独開催」という形で
2007年度以降のばんえい競馬を存続させた帯広市の砂川敏文前市長は、
新市長にバトンタッチした後も
帯広競馬場に足を運んでいるのだとか。
「帯広市長」という立場とは無関係に、
ばんえい競馬が大好きな方だったようだ。
当時の騒動の渦中では
なかなか決断に踏み切らず、
周囲を苛立たせたこともあったと記憶しているが、
ばんえい競馬の「存続」がそれだけ容易な事ではなかったのだろう。
だがそんな困難の中で
「存続させたい」という「気持ち」を持ち、
その前提で物事を考え続けていたということなのだろう。

地方競馬を「存続させたい」と思う「気持ち」。
競馬場を抱える自治体のトップが抱くその「気持ち」について考えた時、
私は2年前、
高知競馬の「夜さ恋ナイター」開幕日に行われた
ナイター照明点灯式に登場した、
尾崎正直・高知県知事の挨拶を思い出す。

「(前略)全国の地方競馬が苦しい状況にある。
しかし我々は多くのファンに支えられたこの競馬を
何とか守っていかなければならない。
売上が伸びない状況下でも歯を食いしばって
頑張っていきたい。
そしてこの"夜さ恋ナイター"を通して、
全国の地方競馬を盛り上げていきたい。」

尾崎知事の言葉、
そしてこの言葉を語る表情に
エネルギーが溢れていたことを覚えている。
厳しい経営環境の中、
「高知競馬を存続させる」ことを前提に何をすべきか?
を考え続けている人の「気持ち」が溢れた言葉だと思った。

荒尾の前畑市長には、
残念ながらその「気持ち」が欠けていたのだろう。
売上が伸びない。
累積赤字を抱えている。
それでも解決策を考え、
時には無理筋でも、
こじつけ・ごまかしだと言われても、
どうにかその理由・意義・手法を見つけてくる。
その「気持ち」を持った上での賞金・手当の削減案を
厩舎関係者に示すのであれば、
賛同を得られる可能性はあったかもしれない。
しかし「存続」の為にその他のコスト削減を検討する様子も見せずに
厩舎関係者の収入をカットする案を提示するのでは、
その「気持ち」が見えない分、誰も納得などしない。
生計を立てている「競馬」とはいえ、
やる気も失せていくだろう。
地元紙の報道で、
「第三セクター等改革推進債」(三セク債)の為に
2年前から会計処理の方法を変えていたのではないか?
と指摘しているものを見つけた。
既に2年前から「廃止」のつもりだったのかもしれない。
一方で「廃止」のシナリオを描きつつ、
もう一方では厩舎関係者に「収入カット」を迫る。
これが事実なのだとすれば、
「存続」への「気持ち」など持っていなかった、
と見るのが自然なのだろう。

競馬に限ったことではないだろう。
企業でも、政治でも、
きっと同じではないだろうか。
トップに立って物事を考える人の「気持ち」が見えるか?
この点が人の心を動かすことも、
時には全く動かないこともあるに違いない。
ばんえい競馬や高知競馬と荒尾競馬との差は
この「気持ち」にあったと見るべきか?
高知競馬は荒尾よりもはるか以前から「廃止」が叫ばれ、
署名活動も行われている。
それでも荒尾の方が先に廃止になってしまう理由は
この「気持ち」の違いではないのか?

だが気を付けなければならないことがある。
高知県も、帯広市も、
常にその「気持ち」を持っている人がトップを
務めているとは限らない。
大袈裟な話をすれば、
時の農林水産大臣が常にその「気持ち」を持っている人だとは限らないし、
さらに言えば、
時の総理大臣が常にその「気持ち」を持っている人だとは限らない。
我々「競馬好き」はそんな前提を踏まえつつ、
「競馬」と付き合っていかなければならないのだ、
と「荒尾競馬廃止」のニュースを聞きながら、
思わずにはいられなかった。

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プロフィール

菅野一郎
(かんのいちろう・本名同じ)
「もっと競馬をやりたいな」で、
「第1回Gallopエッセー大賞(2005年)」において、
佳作を受賞。
現在、競馬読み物Webサイト
「WEEKEND DREAM」管理人を務める。
時には厳しく、時には温かく愛情を込めて、「競馬の未来」を語ります。

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