(独り言)当たらないという「芸」

| トラックバック(0)

mixiチェック

先日、インターネットライブ中継で、
ある地方競馬の模様を見ていた時のことである。
メインレースという事もあって、
地元の競馬専門紙記者による
パドック解説が行われていた。
その記者は断然の1番人気に支持されていた馬ではなく、
別の馬を本命に推していた。
だが、その1番人気馬をパドックでベタ褒めしている。
聞き手のアナウンサーがその記者にこんな問いかけをした。

「どうしてA(1番人気馬)ではなく、
Bが本命なのですか?」

記者は明らかに答えに詰まっていた。
苦笑いしながら、シドロモドロになりつつ、
Bを本命にした言い訳、いや(笑)理由を語り出す。
その説明にならない説明に、
聞き手のアナウンサーが

「馬券面での妙味もありますからね」

とフォロー。
そもそも最初に問いかけた時もそのアナウンサーの口調は
「問い詰める」というよりは「軽くツッコむ」といった様子だった。
その記者も半分からかわれていることはわかっていたに違いない。

このやり取りを聞いて、
「アナウンサーも記者も真面目にやれ」と怒る人もいるだろう。
だが私は微笑ましさを感じた。
競馬予想なんてそんなモンだ、と言ったらお叱りを受けるかもしれない。
だが「そんなモン」という考え方も時には大切かな?
と思うことが時々ある。
私と同世代で、
競馬キャリアがほぼ同じくらいの方なら、
きっと思い出すことがある筈だ。

私が競馬を始めた頃、
テレビの競馬中継や新聞などを見ると
「この人、俺より当たっていないだろう」
と思える評論家や記者がいた事を思い出す。
その人の予想を見ながら
「いい加減な事を言いやがって」と日頃は思いつつも、
たまに予想が一致している時は
何となく嫌な気分になったりして・・・(笑)。
でもその人自身も自分の予想が「当たらない」事は自覚しており、
たまに的中すると
「何か良くないことが起こるかも」
なんて自虐的にコメントしてみたりして、
何となく憎めない。
その人には失礼だが、
「当たらない」ことが立派な「芸」として成立しているようにさえ思えた。

でもそんな「芸」も必要なのではないだろうか?
「競馬」は馬・調教師・騎手による真剣勝負の側面はもちろんある。
でも一方で「楽しいもの」でなければならないだろう。
「当たらない芸」で競馬を見ている人達を楽しませることが出来るのなら、
その人には存在価値が十分にあるだろう。
私自身もそんな「芸」が楽しかった事が、
競馬を今日まで続けてくることが出来た一つの理由となっている。
きっと同様の方は他にも存在するだろう。

少し前に、
ある競馬予想家氏の著書を読んだ。
テレビに登場するその予想家の、
探究心の物凄さに頭が下がる想いを抱きながら読んでいた。
だがその本を読み進めながら感じたことがある。
この人の予想理論を週末の度に実践して馬券を買うのは
大変な手間だろうな、と。
私ぐらいの競馬歴がある人間なら、
そのくらいの手間は我慢しなければならないのかもしれない。
だがこれから競馬を始めようという人が
その理論を実践するのはかなり困難なことであるに違いない。
こうしなければ競馬を楽しむことが出来ないというのならば、
逃げ出してしまう初心者もいるような・・・。
ちなみにその競馬予想家氏だって、
常に当たっている訳ではない。
どんな予想理論だって、
「百発百中」はあり得ない。
当たった一発がデカイから収支がプラスになり、
成立する理論もあるのだろうし。

かつて南関東の競馬場にこんな予想屋がいた。
その予想屋は穴っぽい馬を軸馬にした買い目を提供する時に、

「このレースは馬単で遊んでくれよ!!」

と言いながら、
スタンプを押した紙を手渡ししていた。
もちろんその予想がカスリもしない事もある。
でもその「遊び」が高配当的中に結び付いたこともあった。
そうなのだ。
「遊び」も大切なのだ。

「最近は予想を提供する側も、読む側も、
その予想の当たり外ればかりを気にしすぎる。
もっと違う競馬の魅力を伝えなければ」
と語る評論家やライターが時々存在する。
その「魅力」とはサラブレッドの美しさや走る姿の力強さ、
などといった事を言いたいのかもしれない。
でも「当たらない予想」を「遊ぶ」という
「芸」がもたらす微笑ましさも「魅力」の一つとして
存在してもいいのではないか。
これから競馬を始める人が最初に出会うのは
その「当たらない」ということなのだから。

ちなみに私自身は「当たる」ことも「当たらない」ことも、
「芸」として成立させることが出来ていない。
どちらにしてもまだまだ修行が足りないという自覚は
十分すぎるほど持っているのだけど(笑)。

 

  • Yahoo!ブックマークに登録
  • Google Bookmarksに登録
  • はてなブックマークに登録
  • del.icio.usに登録
  • livedoorクリップに登録
  • Buzzurl(バザール)に登録

関連記事

(独り言)「ダビスタ」の思い出
あるラジオ番組でたまたま知ったのだが、7月15日(月・祝)は任天堂の家庭用ゲーム...
(独り言)騎手からの進言
2006年の菊花賞でのことだった。優勝馬は武幸四郎騎手騎乗のソングオブウインド。...
(独り言)敢闘精神
私は年に何度かしか競輪の車券を買わない。遊ぶお金の少ない人間なので、競輪よりも大...
(独り言)笠松で引退式はあるのだろうか?
日頃は中央競馬の馬券しか買わない競馬ファンに「笠松競馬」をアピールした存在と言え...
(独り言)日本の競馬が変わってしまった
今年のジャパンカップも2年前と同様に「裁決問題」がクローズアップされる結果となっ...
(独り言)その日はきっとやってくる
3コーナーから坂を下り、ロンシャン競馬場名物・フォルスストレート入り口付近までの...
(独り言)2年後の札幌は?
2~3年前まで実際にあった話である。札幌記念の頃に「札幌競馬場に行った」とか、「...
(独り言)「青ランプ」という一筋の光
今、競馬場にいると仮定する。いつものように馬券を買い、その馬券を握り締めながらレ...
(独り言)競馬場・ウインズで「クールシェア」を
先日、テレビで「クールシェア」という取り組みが行われている自治体の様子が取り上げ...
(独り言)競馬にも「チャレンジ」を
いくつかの競技で「誤審騒動」があったロンドンオリンピック。その一方でプレイヤーが...

トラックバック(0)

このブログ記事を参照しているブログ一覧: (独り言)当たらないという「芸」

このブログ記事に対するトラックバックURL: http://weekenddream.jp/bin/mt-tb.cgi/14085

プロフィール

菅野一郎
(かんのいちろう・本名同じ)
「もっと競馬をやりたいな」で、
「第1回Gallopエッセー大賞(2005年)」において、
佳作を受賞。
現在、競馬読み物Webサイト
「WEEKEND DREAM」管理人を務める。
時には厳しく、時には温かく愛情を込めて、「競馬の未来」を語ります。

※「プロフィール詳細・経歴」もご覧ください


私・菅野へのご連絡は以下のメールアドレスまでお願いします。

kankan@weekenddream.jp

運営コンテンツ

WEEKEND DREAM
このサイトを中心に活動中です。

競馬Webサイト管理人の活動日記
競馬に関する話題はもちろん、時事ネタや役に立たない日常の話題まで、色々書きます。

新・競馬ニュース
競馬界の最新ニュースをお伝えします

競馬・極私的勝負メモ
馬券・予想下手な管理人が馬券・予想に強くなるためのメモ書きです。



私・菅野のTwitterはこちら

※「新WEEKEND DREAMメルマガ版」は一時休止中です

NOZZEとは 手数料の安いFX業者

月別アーカイブ

新競馬ニュース

競馬Webサイト管理人の活動日記

競馬・極私的勝負メモ

このサイトを購読する