(独り言)「井馬劇場」を忘れない
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今から約8年前、2004年の夏だった。
当時のばんえい競馬は現在の帯広だけではなく、
岩見沢、旭川、北見でも行われていた。
調教師や騎手、厩務員などの競馬関係者は
開催が変わる度に馬と共にサーカス団のように4つの競馬場を転々としていたと聞く。
私がその方とお会いしたのも帯広ではなく、岩見沢だった。
「その方」とは当時、
ばんえい競馬を主催していた北海道市営競馬組合の職員をしていた方だった。
旭川市から出向していたと記憶している。
出向するまで競馬についての知識は全くなかったが、
競馬の仕事を始めて現場の状況を目の当たりにし、
「ばんえい競馬を取り上げてくれる所を探さねば」
と思ってネット上で様々な競馬サイトを検索している過程で、
たまたま私のサイトに辿り着いたのだとか。
そして声をかけて頂いた。
その職員の方と別のもう一人の職員の方と3人で
岩見沢競馬場の厩舎地区や様々な施設を見て回った。
そして3人でレースを見ていた時のことである。
こんな話が始まった事を記憶している。
「井馬さんの後を継ぐ人がなかなか出てこないのですよ」
「井馬さん」とはもちろん、
ばんえい競馬の実況を担当されている井馬博アナウンサーの事である。
私は「でも井馬さんの実況はばんえい競馬そのものじゃないですか」と言ったが、
主催者の立場としては、井馬アナが体調不良などで実況が出来なかった場合など、
緊急事態に備える必要がある。
だからこその心配事だったようだ。
それから8年後の今年2012年3月26日(月)を最後に、
井馬博アナウンサーはばんえい競馬実況の現場を離れることになった。
当時の市営競馬組合職員が心配していた「後継ぎ問題」もようやく解決したのだろう。
そう言えば1~2年前にもケーブルテレビやインターネットライブ中継の司会を担当する
太田裕士アナウンサーがピンチヒッターを務めたことがあったような・・・。
8年前とはばんえい競馬を取り巻く環境も大きく変わった。
その8年の間にその市営競馬組合がなくなり、
ばんえい競馬の開催も帯広競馬場のみとなっている。
その帯広競馬場は各方面の関係者による努力もあって、
十勝地方の観光スポットの1つとして注目を集める存在となっている。
「世界に一つしかない競馬」を守ろうという意識も8年前とは全く異なる。
井馬アナも後進に道を譲る状況が整ったと判断したのだろう。
ばんえい競馬の魅力の一つに
レース中に「止まる」という点がある。
重い荷物(積載重量)を引っ張りながら2つの山(障害)を越え、
200メートル先のゴールを目指すのだから、馬は途中で息を入れる必要がある。
その「止まる」という行為については騎手同士の駆け引きもある。
平地競走にはないこの「止まる」という状況の間も
実況アナウンサーは実況を続けなければならない。
沈黙する訳にはいかないのだ。
井馬アナの実況を「ばんえい競馬そのもの」と私が感じるのはその点にある。
「止まる」時間も含めて、
ばんえい競馬はゆっくりとレースが流れる。
そのゆっくりとしたレースの流れに井馬アナの実況はピッタリだった。
口調も馬の歩みに合わせるかのようにゆっくりと、
そして第2障害やゴール前など力が入る所では力強く、
実況も流れているように感じられた。
普段は「スピード」を競い合う平地競馬を見ている。
競馬だけではなく、日常生活も「スピード」を要求されることが多い。
だからこそ「スピード」ではない要素が重要視されるばんえい競馬に
「癒し」に似た何かを求める人は少なくない。
そんなばんえい競馬の世界を雰囲気も含めて伝え続けてきた井馬博アナウンサー。
いや、井馬アナ自身が見事に演出し続けてきた部分もあるのかもしれない。
私のような人間がこんな場所で「お疲れ様でした」などと言っていいのかはわからない。
でも2つの障害を含む200メートルの直線で繰り広げられた「井馬劇場」を
映像でも、生でも体感した人間として、いつまでも忘れずにいたいと思う。
独特で、そしてどこか温かさを感じる「劇場」だったのだから。
当時のばんえい競馬は現在の帯広だけではなく、
岩見沢、旭川、北見でも行われていた。
調教師や騎手、厩務員などの競馬関係者は
開催が変わる度に馬と共にサーカス団のように4つの競馬場を転々としていたと聞く。
私がその方とお会いしたのも帯広ではなく、岩見沢だった。
「その方」とは当時、
ばんえい競馬を主催していた北海道市営競馬組合の職員をしていた方だった。
旭川市から出向していたと記憶している。
出向するまで競馬についての知識は全くなかったが、
競馬の仕事を始めて現場の状況を目の当たりにし、
「ばんえい競馬を取り上げてくれる所を探さねば」
と思ってネット上で様々な競馬サイトを検索している過程で、
たまたま私のサイトに辿り着いたのだとか。
そして声をかけて頂いた。
その職員の方と別のもう一人の職員の方と3人で
岩見沢競馬場の厩舎地区や様々な施設を見て回った。
そして3人でレースを見ていた時のことである。
こんな話が始まった事を記憶している。
「井馬さんの後を継ぐ人がなかなか出てこないのですよ」
「井馬さん」とはもちろん、
ばんえい競馬の実況を担当されている井馬博アナウンサーの事である。
私は「でも井馬さんの実況はばんえい競馬そのものじゃないですか」と言ったが、
主催者の立場としては、井馬アナが体調不良などで実況が出来なかった場合など、
緊急事態に備える必要がある。
だからこその心配事だったようだ。
それから8年後の今年2012年3月26日(月)を最後に、
井馬博アナウンサーはばんえい競馬実況の現場を離れることになった。
当時の市営競馬組合職員が心配していた「後継ぎ問題」もようやく解決したのだろう。
そう言えば1~2年前にもケーブルテレビやインターネットライブ中継の司会を担当する
太田裕士アナウンサーがピンチヒッターを務めたことがあったような・・・。
8年前とはばんえい競馬を取り巻く環境も大きく変わった。
その8年の間にその市営競馬組合がなくなり、
ばんえい競馬の開催も帯広競馬場のみとなっている。
その帯広競馬場は各方面の関係者による努力もあって、
十勝地方の観光スポットの1つとして注目を集める存在となっている。
「世界に一つしかない競馬」を守ろうという意識も8年前とは全く異なる。
井馬アナも後進に道を譲る状況が整ったと判断したのだろう。
ばんえい競馬の魅力の一つに
レース中に「止まる」という点がある。
重い荷物(積載重量)を引っ張りながら2つの山(障害)を越え、
200メートル先のゴールを目指すのだから、馬は途中で息を入れる必要がある。
その「止まる」という行為については騎手同士の駆け引きもある。
平地競走にはないこの「止まる」という状況の間も
実況アナウンサーは実況を続けなければならない。
沈黙する訳にはいかないのだ。
井馬アナの実況を「ばんえい競馬そのもの」と私が感じるのはその点にある。
「止まる」時間も含めて、
ばんえい競馬はゆっくりとレースが流れる。
そのゆっくりとしたレースの流れに井馬アナの実況はピッタリだった。
口調も馬の歩みに合わせるかのようにゆっくりと、
そして第2障害やゴール前など力が入る所では力強く、
実況も流れているように感じられた。
普段は「スピード」を競い合う平地競馬を見ている。
競馬だけではなく、日常生活も「スピード」を要求されることが多い。
だからこそ「スピード」ではない要素が重要視されるばんえい競馬に
「癒し」に似た何かを求める人は少なくない。
そんなばんえい競馬の世界を雰囲気も含めて伝え続けてきた井馬博アナウンサー。
いや、井馬アナ自身が見事に演出し続けてきた部分もあるのかもしれない。
私のような人間がこんな場所で「お疲れ様でした」などと言っていいのかはわからない。
でも2つの障害を含む200メートルの直線で繰り広げられた「井馬劇場」を
映像でも、生でも体感した人間として、いつまでも忘れずにいたいと思う。
独特で、そしてどこか温かさを感じる「劇場」だったのだから。
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