(独り言)オルフェーヴルの手綱

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現地時間21日(土)、
イギリス・アスコット競馬場で行われる
キングジョージ6世&クイーンエリザベスSに、
今年の日本ダービー馬ディープブリランテが挑戦する。
日本調教馬がこのレースに参戦するのは
クリストフ・ルメール騎手がハーツクライに騎乗して、
3着に入った2006年以来のこととなる。

そのハーツクライが参戦した2006年のキングジョージ直後の事だった。
次の週末に国内の競馬場で、
ある競馬メディア関係者にたまたま遭遇した。
その人はアスコット競馬場から帰って来たばかり。
もちろんキングジョージの話になる。
彼は私にこんな話をしてくれた。

同様に日本から現地取材に駆け付けていた某競馬メディア関係者がレース後、
「どうしてルメールなんか乗せたんだよ」と嘆いていたという。
「ルメールじゃダメなの?」とその人が尋ねると
こんな答えが返ってきたのだとか。

「だってルメールって、アスコットで乗ったことがないんだよ」

ディープインパクトを破った前年の有馬記念、
そしてその後のドバイシーマクラシックを優勝した時の鞍上である
ルメール騎手は信頼出来る存在だ。
そして我々日本人から見ると、
ルメール騎手は外国人なのだからアスコットでも乗った事がある違いない、
と思ってしまう。
しかし当時のルメール騎手はアスコット競馬場で騎乗した経験がなかったのだとか。
この年のキングジョージは6頭立てという少頭数の一戦だった。
「頼めば喜んで乗ってくれるビッグネームが何人もいたのに・・・」
とその人は悔やんでいたのだという。

海外競馬通の評論家を中心に、
「日本馬が海外遠征をする時は日本の騎手ではなく、
その競馬場で騎乗経験のある現地の騎手を起用すべきだ」
という話が出てくるようになったのはその頃からだと記憶している。
その一方で
「日本で馬にレースを教え込んできた日本人騎手が乗ってこそ、
意味があるのではないか」
という反論もあり、論争となることもあった。
昨年の凱旋門賞に参戦したヒルノダムールとナカヤマフェスタも
日本人騎手が騎乗している。
心情的な理由もあって、コース経験が豊富ではあっても、
外国人騎手への乗り替わりは容易なことではないのだろう。

今年の凱旋門賞に挑戦するオルフェーヴルの鞍上が
新馬戦から全てのレースで手綱を取り続けていた池添謙一騎手ではなく、
クリストフ・スミヨン騎手になったという。
凱旋門賞が行われるフランス・ロンシャン競馬場を「よく知っている」どころか、
2度の凱旋門賞優勝を経験している騎手である。
確かにこのレースを挑む上ではふさわしい騎手のように思える。
「日本の競馬関係者もこのような判断をする時代となったのか」
という意見もネット上で見かけた。

しかしこれまで池添謙一騎手が手綱を取り続けてきたのは
単なる心情的な理由だけではなく、
レース後に騎手を振り落としてみたり、今年の阪神大賞典で逸走してみたりと、
乗り慣れた騎手でなければレースにならないからだ、という見方もある。
スミヨン騎手ほどの名手とはいえ、
このオルフェーヴルを乗りこなすのは容易ではないのでは?
という疑問の声もいくつか見かけた。

オルフェーヴルではなく、
昨年のヒルノダムールやナカヤマフェスタがこうした乗り替わりで参戦するのであれば、
それほど疑問を抱く人は多くないだろう。
だがオルフェーヴルという馬に関しては少々事情が異なる気もする。
だから宝塚記念を勝った後、
「凱旋門賞での鞍上がどうなるのか?」という点を密かに興味深く思っていた。
そして結果はスミヨン騎手への乗り替わり。
この決断はどんな結果をもたらすのか?

報道によるとオルフェーヴルは本番・凱旋門賞の前に、
9月16日(日)のフォア賞(G2、ロンシャン・芝2400メートル)に出走するという。
まずはこのフォア賞に注目すべきなのだろう。
果たしてオルフェーヴルとスミヨン騎手のコンビネーションはどうなのか?

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プロフィール

菅野一郎
(かんのいちろう・本名同じ)
「もっと競馬をやりたいな」で、
「第1回Gallopエッセー大賞(2005年)」において、
佳作を受賞。
現在、競馬読み物Webサイト
「WEEKEND DREAM」管理人を務める。
時には厳しく、時には温かく愛情を込めて、「競馬の未来」を語ります。

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