（独り言）熱き同期のベテラン対決

東日本大震災の影響でナイターではなく、
昼間開催の形で再開となった大井競馬。
その大井競馬再開２日目にあたる１９日（火）、
ある大記録が更新された。
この日の１Ｒで勝利した的場文男は、
地方競馬における通算勝ち星が６１２８勝となり、
これまで石崎隆之（船橋）が持っていた
地方競馬現役騎手の最多勝記録を更新した。
「鉄人」佐々木竹見元騎手（川崎）の７１５１勝に次ぐ、
地方競馬史上２位の記録となる。

このニュースを目撃した時、
ある事をふと考えた。
こうした記録更新は多くの場合、
若い世代がベテランを追い抜く形で実現する。
だから抜かれたベテランは若い世代による記録更新を
「記録は破られる為にある」と称賛する。
しかし今回は少々事情が異なる。
共に１９５６年生まれ。
騎手デビューも同じ１９７３年である。
同期の騎手が記録を更新してしまったのだ。
記録を破られる形となった石崎隆之もまだ現役。
「記録は破られる為にある」どころではないだろう。

石崎隆之が再び抜き返す可能性も
あるのではないか？
この日、的場文男は２Ｒも勝って６１２９勝。
しかしその後は勝ち星を挙げていない。
２０日（水）も未勝利だった。
一方の石崎隆之は記録を抜かれて以降は
まだ勝ち星がなく、
６１２７勝のままである。
その差は２つ。
両者に騎乗環境の違い、
勢いの違いはあるかもしれない。
それでもわずか２勝差で共に現役ならば、
再逆転は十分にあり得る。

石崎隆之が勝ち星で
的場文男に大きく差をつけていた頃、
南関東の競馬場に足を運ぶ度に
つぶやいてしまう一言があった。
「このレースはどう（馬券を）買っていいのかわからん。
とりあえず石崎（隆之）を買っておくか。」
南関東のどの競馬場に行っても
常に彼の姿はあった。
そして専門紙の印が集まる馬に常に乗っていた。
ＪＲＡと違って、開催日に常に通える訳ではなかった南関東。
知らないことも多い自分にとっては、
「迷ったら石崎」だったのだ。
一方の的場文男はあくまで「大井の的場」という印象があった。
船橋、川崎、浦和でもその姿は見かけるが、
騎乗馬にそれほど印はなく、
目立った存在ではなかった。
その代わり、大井では抜群の存在感を示していたのだが。
その「迷ったら石崎」の時代を見ている私としては、
出来れば一度でいいから
石崎隆之に抜き返してもらえないか、
という気持ちになってしまう。

それにしても、
５０代の同期の二人が「現役最多勝記録」を巡る戦いを続ける、
というのは極めて稀な現象だ。
そんな状況に立ち会えるだけも競馬好きとしては
幸せな気分になる。
だからこそこの二人には、
いつまでも抜きつ抜かれつの戦いを続けて欲しい。
抜いた的場文男にも、
抜かれた石崎隆之にも・・・。