(独り言)「交流」が変えるもの

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1996年5月5日のことである。
その日の高崎競馬場には
溢れるほどの来場者が集まっていた。
当時はっきりと覚えていた事がある。
そのレースに騎乗予定がなかった騎手たちも皆、
控え室から身を乗り出すようにして
レースを見ていた。
その姿は私が見ていたスタンドからもはっきりと分かった。
場内に集まったファンも、
そして騎手たちも注目していたのはあるJRA所属の1頭だった。
その馬の名はホクトベガ。
前年の川崎・エンプレス杯以降、
中央・地方を問わず、
国内のダート重賞戦線で無敵を誇っていた名牝ホクトベガ。
そのホクトベガが高崎競馬場で唯一の交流重賞である
群馬記念に参戦してきたのだ。
その存在は当時の高崎競馬所属の騎手たちにとっても
非常に興味のあるものだったのだろう。
レースは慣れない高崎のキツいコーナーに外に膨らんでしまったりと、
スムーズさを欠く面を見せながらも、
ホクトベガは当時のコースレコードタイムで快勝。
まさに「強い馬が強い競馬を見せた」瞬間だった。
身を乗り出すように見ていた高崎の騎手たちは、
ホクトベガの勝ちっぷりにどんな印象を抱いたのだろうか?

この群馬記念を思い出したのには理由がある。
28日(木)の朝に見た
大井競馬所属騎手・達城龍次騎手のTwitterがきっかけだった。
達城騎手はこの日から大井競馬場で始まる
ある馬の調教の様子に注目したい、
とツイートしていた。
彼が興味を持っていたのはレッドアラートデイという馬だった。
8月3日(水)に大井競馬場で行われる
サンタアニタトロフィーに出走するために
アメリカからやってきた馬である。
国が違えば「競馬」に関する考え方や調教のやり方に
違いがある可能性はあるだろうし、
馬格や筋肉のつき方なども、
大井や他の南関東の馬たちとも違いがあるかもしれない。
達城騎手は恐らくそんな興味を抱きながら、
レッドアラートデイという馬を見ようとしているに違いない。

このレッドアラートデイという馬が来日する過程、
そして恐らく同様に外国馬がやってくると思われる
年末の東京大賞典が国際G1レースとなる過程には
様々な紆余曲折があった事だろう。
立場的に面白くない人もいるのかもしれない。
もちろん実際のレースでレッドアラートデイが
どんな結果を残すのかはわからない。
南関東の馬たちを全く相手にしない可能性もあるし、
一方で日本の気候や大井の馬場が全く合わない可能性もある。
しかし現場ではこの状況下を利用して、
何かを学ぼうとする厩舎関係者がいる。
きっと何かを吸収する場として利用するつもりでいるのは、
達城騎手だけではないだろう。

そう言えばこの達城騎手に関して
Twitter上でこんなやり取りを目撃したことがある。
朝の調教の合間にツイートした彼に
JRAの松岡正海騎手が
「今日は何時から乗ってるの?」
と尋ねていたのだ。
制度の違い、所属の違い、
あるいはレッドアラートデイのように
「国」の違いもあるかもしれない。
それでもこのように「交流」は
確実に現場の関係者たちの意識に何らかの影響を与えるものなのだろう。
かつて高崎競馬場にやってきたホクトベガに興味を抱いた
高崎競馬の騎手たちにも、
レッドアラートデイが気になる大井競馬の関係者たちにも、
地方競馬の騎手たちの仕事が気になるJRA所属騎手たちにも、
共通する想いがきっとある。
その想いが変えていく「競馬」を
我々はやがて目にする日が来るに違いない。

 

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プロフィール

菅野一郎
(かんのいちろう・本名同じ)
「もっと競馬をやりたいな」で、
「第1回Gallopエッセー大賞(2005年)」において、
佳作を受賞。
現在、競馬読み物Webサイト
「WEEKEND DREAM」管理人を務める。
時には厳しく、時には温かく愛情を込めて、「競馬の未来」を語ります。

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