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(独り言)騎手からの進言

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2006年の菊花賞でのことだった。
優勝馬は武幸四郎騎手騎乗のソングオブウインド。
そのソングオブウインドについて、
最終レース終了後に行なわれたレース回顧のイベントで、
こんな話があった事を覚えている。

このレース回顧のイベントは、
まず優勝騎手以外の騎手がレースVTRを見ながら「敗者の弁」を語り、
その後に改めて優勝騎手が登場して勝因などを語る、
というスタイルだった。
その「敗者」の一人として登場したのが武豊騎手。
この菊花賞ではアドマイヤメインに騎乗し、3着に敗れていた。

武豊騎手がこんな話を披露した。
優勝馬ソングオブウインドのデビューから3戦目までの
手綱を取っていたのは武豊騎手だった。
最後に手綱を取った3戦目は阪神のダート1800メートル戦で行なわれた未勝利戦。
このレースで3着に敗れた直後、
武豊騎手は同馬を管理する栗東・浅見秀一厩舎のスタッフに
こんな進言をしたのだという。

「この馬はダート1400メートル戦の方が向いていると思う」

イベント会場は爆笑に包まれた。
あの武豊騎手が3度も騎乗して
「ダート1400メートルが向く」と思った馬が、
後に芝3000メートル戦の菊花賞を勝ってしまったのだから。
ちなみに武豊騎手の進言を受けて、
ソングオブウインドはデビュー4戦目にダート1400メートル戦に出走している。
この時は武幸四郎騎手が騎乗して3着だった。

今、どうしてこんな話を書いているのか?
言うまでもない。
昨年のNHKマイルカップ優勝馬カレンブラックヒルが
未経験のダート戦であるG1・フェブラリーSに挑んだのは、
主戦騎手である秋山真一郎騎手の進言があったからだと報じられている。
インターネット上では秋山騎手への批判の声も散見される。
私は「秋山騎手の進言」という報道を目にした時、
すぐにこのソングオブウインドの件を思い出した。

あの武豊騎手でも
「ソングオブウインドはダート1400メートル向き」という進言を厩舎サイドにしてしまうのだ。
騎手はその馬の背中や手綱を通して、
「馬の適性を一番良く知っている」と我々競馬ファンは思っている。
それはファンだけではなく、厩舎関係者も同様なのだろう。
しかしその見極めは日本を代表する名手「武豊」であっても
限界があるということに違いない。
秋山騎手の「カレンブラックヒルはダートも問題はない」という判断も、
同様のものなのだろう。
「騎手からの進言」は絶対的なものでないと考えるべきではないのか。

「ダート適性」とは全く別の所に敗因があった可能性もある。
そもそも昨年の天皇賞・秋以来の実戦なのだ。
休養明けの一戦がこのG1戦という点に問題はなかったのか?
他にもレース後に秋山騎手が語った「隣の馬」の話も含めて、
検証すべき材料はいくつもあるだろうし。

秋山騎手を庇うつもりはない。
しかし今年のフェブラリーSは
「騎手からの進言」の存在があまりにも大きくなり過ぎた。
カレンブラックヒルの単勝1番人気に
秋山騎手自身が驚いたのではないだろうか。
もう少し気楽な立場でレースに挑むことが出来ていたら・・・。
もちろん勝負事に「タラレバ」は禁物なのだけど。

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