[コラム]反省などをしている暇はない
古い話で恐縮だが、2001年のオークスでの出来事だった。この年のオークス馬はレディパステルだった。鞍上は、短期免許で来日していたアメリカの名手、ケント・デザーモ騎手である。
最終レース後、東京競馬場のウィナーズサークルでは、レース回顧のイベントが行われていた。優勝騎手であるケント・デザーモ騎手も登場し、ターフビジョンに放映されたオークスの映像を見ながら、レースを振り返るという、G1当日の競馬場ではよく行われているイベントである。そのイベントの締めくくりで、司会者が同騎手にこんな質問をした。
「デザーモ騎手は来週のダービーでは、ボーンキングに騎乗予定です。意気込みを聞かせてください。」
G1が続く週だけに、これもこうしたイベントでは「よくある質問」のひとつと言っていいだろう。しかし、ケント・デザーモ騎手は笑顔を浮かべつつも、通訳を介してこう答えたのだった。
「せっかく今日、レディパステルでオークスを勝てたのだから、もう少しその喜びに浸らせてよ」
アメリカの名手には、日本の競馬メディア関係者やファンが「少々せっかちな人たち」に見えたのかもしれない。
だが、「せっかちだ」などとは言っていられない。グリーンチャンネルに加入している人ならご存知だろう。最終レースが終わると、パドック解説を務める専門紙のトラックマンや、スポーツ紙・夕刊紙の記者は、その日に行われたレースの結果分析も、喜びも、反省もそこそこにして、次週に行われる重賞競走における「推奨馬」を視聴者に紹介しなければならない。もちろん、1週前追い切りを見ているのだから、「推奨馬」を挙げることは可能だろう。だが、時には視聴者側も「次週のことは明日以降でいいのでは?」と思ってしまう時もあるのではないか。
実は私も日曜日のJRAにおける最終レースが終わると、頭の中をすぐに「次週」に切り替えなければならない。私は1週前追い切りを見ることができる立場ではないが、その日の夕方5~6時頃に「TARGET frontier JV」で次週の特別レース登録馬をチェックすることが可能となったら、ゴーストで請け負っている競馬関連記事担当者に「このレースで穴予想の記事を書きます」との連絡メールを送らなければならない。あくまでゴーストなので、ここで詳細を書くことはできないが、実は私も「次週のことは明日以降に考えます」などという事は許されない仕事を請け負い、小銭を稼いでいる一人なのである。
Twitterなどを見ていると、時々こんな鋭い指摘をする人がいる。
「専門紙やスポーツ紙の予想をする人は、自分の予想が当たらなかった時は、反省なり、謝罪なりの一言があるべきではないのか?」
ある意味では正論である。しかし恐らく、専門紙やスポーツ紙・夕刊紙関係者の多くは「反省などをしている暇はない」のが現実ではないだろうか?「反省する時間があったら、次週の重賞競走で勝つ馬を考えなさい」といったところだろうか。いや、きっとホントはそんなことを言ってはいけないのだろうなあ。スミマセン。もっとも、このサイトでの私に関しては(ゴーストの方ではなく)、無料で買い目まで出しているのだから、その買い目を巧く外して買えば当たる可能性が高いので、色々と工夫をして頂ければ・・・(笑)。